1. イントロンを介した単一転写ユニットシステムによる植物ゲノム編集法 iSTU-CRISPR (CRISPR 3.0)
[出典] Intron-Based Single Transcript Unit CRISPR Systems for Plant Genome Editing. Zhong Z, Li S [..] Qi Z, Zhang Y. Rice 2020-02-03.
- Cas9またはCas12aとgRNAsを単一のプロモーター (Pol II)で発現させるsingle transcript unit (STU)システムによってコンパクトなCRISPR-Casゲノム編集システムを実現できる。先行研究で、リボザイム (RZ)切断部位、Csy4認識部位またはtRNAを組み込むことでCas9とsgRNAを細胞内で切り出せるSTUシステム (CRISPR 2.0システム: Plant Biotechnol J, 2019)を開発してきた電子科技大学 (成都)とU. Marylandなどの研究グループは今回、イントロンを利用したSTU (iSTU) CRISPRシステムを開発しCRISPR 3.0として発表した 。
- はじめに、イネにおいてeGFPレポータをモデルとして3種類の作物からのイントロンと、tRNAまたはRZを組み込んだsgRNAとを組み合わせた予備実験を行い、期待通りのスプライシングが進行することを確認した (Fig. 1引用下図参照)。
- 予備実験の結果に基づいて、最適な条件で、Cas9とCas12aのオープンリーディングフレームに、それぞれsgRNAと反復配列に組み入れたcrRNAを含むイントロンを挿入し、iSTU-Cas9とiSTU-Cas12aの双方で、単一および多重ゲノム編集を実現した。
- iSTUの概念実証実験に成功したことから、今後、編集効率の向上に取り組む。
2. CRISPR-PCDup: S. Cerevisiaeの染色体の異なるセグメントの同時複製を実現
[出典] CRISPR-PCDup: a novel approach for simultaneous segmental chromosomal duplication in Saccharomyces cerevisiae. Hassan N, Sasano Y [..] Harashima S. AMB Express 2020-02-03.
- 阪大において、出芽酵母に内在する相同組換修復を利用して、PCRを介して染色体の任意の領域 (50 kbから300 kbまでのサイズ)を自在に複製することで部分異数性 (segmental anueploid)を作出する手法 PCDup (PCR-mediated chromosome duplication, PCDup: Sci Rep, 2015)を開発した原島 俊 (現 崇城大学)らは今回、CRISPR技術による部分異数性を作出する手法を、CRISPR-PCDupとして発表した (CRISPR-PCDcupの概要 FIg. 1引用下図参照)。
- CRISPR-PCDupによって、単一の領域の複製の効率が30倍にまで向上し、複数の染色体領域の同時複製が容易になり、さらに、複製のサイズを300 kbから400 kb以上へと拡大することに成功した。
3. [展望] RNA工学へと展開するCRISPRシステム
[出典] PERSPECTIVE "RNA-targeting CRISPR systems from metagenomic discovery to transcriptomic engineering" Smargon AA, Shi YJ, Yeo GW. Nat Cell Biol 2020-02-03.
- RNAを標的とするCRISPR-Cas (RCas)の同定; 多様なRCasプラットフォーム (Cmr複合体, Csm複合体, Cas9, およびCas13); RCas以外のRNA編集ツールと比較 (pAgo, ASO, CIRTS, RNAi, ZFおよびPUF/PPR)
- 基礎生物学 (細胞過程の観察と操作)とバイオテクノロジー (超高感度検出; 遺伝子治療; ヒト・動植物ウイルスへの対策)への応用
- 留意すべき点と課題、および、今後の展望
4. [成書] RNA Interference and CRISPR Technologies -最新の27手法のプロトコル集
[出典] RNA Interference and CRISPR Technologies - Technical Advances and New Therapeutic Opportunities. Mouldy Sioud/University Hospital-Radiumhospitalet (eds) Methods in Molecular Biologyvolume 2115
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