#2020-03-11 Science誌採択公開版へのリンクと構造データへのリンクと構造図を追加し、テキストも一部改訂
# 2020-03-01 crisp_bio 2020-03-01 "新型コロナウイルスのメインプロテアーゼに対してIC50 0.48μMの阻害活性を示す低分子を治験薬から発見"へのリンク追加
# 2020-02-23 用語の整理:SARS-CoV-2(ウイルスの名称)がCOVID-19 (ウイルス感染症の名称)を引き起こす
# 2020-02-21 初稿
[出典] Structural basis for the recognition of the 2019-nCoV by human ACE2. Yan R, Zhang Y, Guo Y, Zhou Q. bioRxiv 2020-02-20. > Science 2020-03-04 "Structural basis for the recognition of the SARS-CoV-2 by full-length human ACE2"
# 2020-03-01 crisp_bio 2020-03-01 "新型コロナウイルスのメインプロテアーゼに対してIC50 0.48μMの阻害活性を示す低分子を治験薬から発見"へのリンク追加
# 2020-02-23 用語の整理:SARS-CoV-2(ウイルスの名称)がCOVID-19 (ウイルス感染症の名称)を引き起こす
# 2020-02-21 初稿
[出典] Structural basis for the recognition of the 2019-nCoV by human ACE2. Yan R, Zhang Y, Guo Y, Zhou Q. bioRxiv 2020-02-20. > Science 2020-03-04 "Structural basis for the recognition of the SARS-CoV-2 by full-length human ACE2"
[背景]
- 2019年のコロナウイルス疾患を引き起こす新型コロナウイルスも、SARS-CoVのような他のコロナウイルスと同様に、表面のスパイク糖タンパク質 (Sタンパク質)の受容体結合ドメイン (receptor binding domain, RBD)を介してアンジオテンシン変換酵素2 (ACE2)に結合するとされている [新型コロナウイルスは2019-nCoVとも呼ばれていたが、国際ウイルス分類委員会は2月11日にSARS-CoV-2と命名した (bioRxiv 2020-02-11)]。
- ACE2に結合する前のSARS-CoV-2 Sタンパク質のクライオ電顕構造については、2020年2月19日にScience誌から発表されていた [1]。
- 今回紹介論文の著者である西湖高等研究院と西湖大学の研究グループは2月18日のbioRxivに投稿 [2]にて、ACE2と、その腸管細胞表面での発現にACE2を必要とするアミノ酸トランスポーターB0AT1(SLC6A19) 全長との複合体の構造をクライオ電顕法により2.9 Å分解能で再構成し、複合体がヘテロ二量体を形成することを見出した。加えて、構造モデリングに基づいて、ACE2-B0AT1複合体が2つのSタンパク質 (二量体Sタンパク質)に結合することを示唆していた。
[成果]
- 研究グループは今回、"SARS-CoV-2のRBD+ ACE2 + B0AT1" の複合体構造をクライオ電顕法により2.9 Å分解能で再構成し、局所的分解能3.5 ÅのACE2-RBDの界面領域の構造に基づいて、ACE2とRBDの相互作用を論じ、2月20日にbioRxivに投稿していたが、2020-03-04に"Structural basis for the recognition of the SARS-CoV-2 by full-length human ACE2"というタイトルでScience誌から発表されるに至った 。
- SARS-CoV-2は、SARS-CoVと同様に、極性アミノ酸残基を介してACE2の細胞外ペプチド・ドメインによって認識されることに加えて、Science 2020-02-19 論文 [1]が示していた「ACE2に対するSARS-CoV-2のRBDの結合親和性が、SARS-CoVのRBDよりも高い」ことを説明可能なアミノ酸の相違を同定した。
[補足]
- これまで知られていたコロナウイルスの表面スパイク糖タンパク質 (Sタンパク質)は、1200アミノ酸を超えるモノマーからなるホモ三量体として存在する。
- SARS-CoVの場合は、ウイルス成熟の間に、ホモ三量体が2つのサブユニット (S1とS2)に分裂し、S1上の受容体結合ドメイン (RBD)がACE2に結合し、このS1結合時に、S2サブユニットが開裂サイトを露出するコンフォメーションに変化し、ヒト細胞のプロテアーゼに切断されることで、S2の細胞融合活性が発揮されることで、ウイルスがヒト細胞に侵入可能となる。
[構造データ] 2020-03-11公開
- ACE2-B0AT1 complex of closed conformation (全体構造: PDB 6M18 and EMD-30040, 細胞外領域: EMD-30044, 膜貫通領域: EMD-30045)
- ACE2-B0AT1 complex of open conformation (PDB 6M1D and EMD-30041)
- The complex of the RBD of SARS-CoV-2 with the ACE2-B0AT1 complex (全体構造: PDB 6M17and EMD-30039, 細胞外領域:EMD-30042, 膜貫通領域: EMD-30043, ACE2- RBD interface map: EMD-30046) ; RCSB PDBからキャプチャした全体図を以下に引用
[引用記事・論文と関連論文]
- crisp_bio 2020-02-16 [2020-02-21改訂] 新型コロナウイルスのスパイク糖タンパク質のクライオ電顕構造
- Structure of dimeric full-length human ACE2 incomplex with B0AT1. Yan R, Zhang Y, Li Y, Xia L, Zhou Q. bioRxiv 202-02-18.
- crisp_bio 2020-02-22 新型コロナウイルスのスパイク糖タンパク質 (S)の構造、機能および抗原性
コメント