[出典] [EDITORIAL] Virus against virus: a potential treatment for 2019-nCov (SARS-CoV-2) and other RNA viruses. Nguyen TM, Zhang Y, Pandolfi PP. Cell Res 2020-02-18.

 Beth Israel Deaconess Medical Center (HMS)とU Trinoの研究グループは、中国、米国およびオーストラリアの感染者19人からの新型コロナウイルス (以下、2019-nCov)の配列を解析し、分離株の配列の間に変異が存在することを確認した。例えば、先行研究 (J Virol, 2015) でコウモリからヒトへのコロナウイルスの感染をドライブすることが示唆されていたポリペプチドをコードするORF8における63と84のアミノ酸が、一塩基変異を介して、感染者の間で異なっていた。
  • CRISPR-Cas13dに、ウイルスのレプリカーゼ/トランスクリプターゼ (ORF1ab)とスパイク糖タンパク質 (S)のそれぞれを標的 [*]とするgRNAsを組み合わせることで、感染者間でゲノム配列に変異が存在する2019-nCovを機能的に阻害することが可能である (研究室でレビュー中)。
  • [*] 2019-nCoVに対して、HIV逆転写酵素阻害剤に似た化学構造を帯びたギリアド社のNUC阻害剤であるムデシビル (remdesivir)による治験が行われており、また、HIVとSARS-CoVのSを標的とする薬剤の第1相試験が行われている。
  • Cas13d-crRNA (gRNA)は標的認識に特定のPAM配列を必要としないことから、gRNAの設計の自由度が高く、ヒトのトランスクリプトームに影響を及ぼすことなく、2019-nCoVのRNAゲノムのペプチド・コーディング領域10ヶ所を標的とする10,333種類のgRNAsを設計するに至った。
  • Cas13dは小型であることから、Cas13dとgRNAのアレイ (3 gRNAsまで)を一体としてAVVでデリバリー可能であり、また、AAVのさまざまな血清型の中で、肺に特異的に向かう血清型を選択することで、感染部位へのデリバリーが可能である。
[関連crisp_bio記事]
  • 2018-03-17 これまでで最小かつヒト細胞で活性なCas13dの同定と解析2報(Salk研;Arbor Biotechnologies/NCBI)
  • 2020-02-19 SHERLOCK、新型コロナウイルス検出プロトコルを公開 (SHELOCKは主としてCas13aを使用)