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論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

1. BGIの100ドルゲノム
[出典] "China's BGI says it can sequence a genome for just $100" Regalado A. MIT Technology Review 2020-02-26.
  • 2020年2月23-26日にフロリダのマルコ島で開催されたAdvances in Genome Biology and Technology (AGBT)の総会にて、BGI (深セン市)が、1ゲノム解読コストが100ドルを切り、年に10万人のゲノムを解読可能なゲノムシーケンシングシステム (以下、BGIシステム)を発表した。
  • Human Genome ProjectとCraig Venterらによってそれぞれヒトゲノムが解読された2003年以来、ゲノムシーケンシグのコストはつるべ落としに下がり続けて、今では、大規模なゲノムセンターでおおよそ600ドルと見られている (この数字の殆どは試薬であるランニングコストであり、装置の初期投資は含まれていないと思われる)。
  • BGIシステムでは、500 nm間隔でウエルをセットしたフリスビーサイズの大きなチップを、ロボット・アームを介して、部屋いっぱいにもなる大きさの再利用可能なケミカル・バスに浸け、測定が始まる。こうして、1回のランに3日を要するが、1回あたり750ゲノムを解析することで、スループットを上げている。
  • 現時点で、10万ゲノム/年のスループットを必要としているセンターは無いが、英国の50万人ゲノムプロジェクト [*] に続いて米国の100万人ゲノム計画と、癌やマイクロバイオームの個別化シーケンシングが見えており、また、中国では誕生する~2,000万人を対象とするゲノムシーケンシングが視野に入っていることから、BGIシステムのマーケットは存在すると思われる。
  • BGI groupは今年 (2020年)後半から、ヒトゲノムや癌ゲノムの大規模プロジェクトを進める大型センターからのオーダーメード受注を開始する予定である。
  • [*] crisp_bio 2019-12-18 英国バイオバンク由来337,205名のデータに基づくGPCRs遺伝変異のフェノムワイド関連研究 (PheWAS)
2. BGIの新型コロナウイルス (SARS-CoV-2)検出キット
[出典] NEWS "BGI Develops Real-Time Fluorescent RT-PCR Kit for Detecting the 2019 Novel Coronavirus" BGI News Center. 2020-01-23;NEWS "Coronavirus and the race to distribute reliable diagnostics" Sheridan C. Nat Biotechnol 2020-02-19.
  • BGIは1月23日に、新型コロナウイルス (2019-nCov, 後にSARS-CoV-2)を検出するreal-time fluorescent RT-PCRキットを開発したと発表した。また、この時点で、中国内の病院やセンターで使用されているとし、24日には武漢に10,000キットを寄贈するとした。
  • Nature Biotechnologyの記事によれば、2月5日には、1日に10,000サンプル処理可能なラボを武漢で運用開始したとのことである。この記事はBGI以外のキット開発動向が紹介されており、Table 1 SELECTED DIAGNOSTIC TESTS FOR SARS-CoV-2 に、BGIを含む中国、米国、ドイツ、英仏の機関や企業によるSARS-CoV-2動向が整理されている。
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