[出典] "Engineering Cellular Biosensors with Customizable Antiviral Responses Targeting Hepatitis B Virus" Matsunaga S [..] Ryo A. iScience 2020-02-06.
背景
UCSFのWendell A. Limらの研究グループは2016年に、細胞外からの任意のシグナル (リガンド結合)に対して、細胞内の然るべき遺伝子発現への変換を可能とする合成Notch受容体 (Synthetic NotchReceptor: SNR)の手法を発表した: [参照] crisp_bio 2017-10-02 合成Notch受容体によるシグナル伝達経路の設計と腫瘍免疫療法への展開: 同記事に掲載したNotchシグナル伝達経路の模式図を以下に再掲)

概要
横浜市立大学、国立感染症研究所、国立国際医療研究センター研究所ならびに群馬パース大学の研究グループは今回、SNRの手法を利用して、合成B型肝炎ウイルス (HBV)の表面抗原 (HBs抗原)を認識し、細胞内で、HBVに対する中和抗体とインターフェロンを分泌する人工免疫細胞を創出した。
横浜市立大学、国立感染症研究所、国立国際医療研究センター研究所ならびに群馬パース大学の研究グループは今回、SNRの手法を利用して、合成B型肝炎ウイルス (HBV)の表面抗原 (HBs抗原)を認識し、細胞内で、HBVに対する中和抗体とインターフェロンを分泌する人工免疫細胞を創出した。
補足
今回のSNRは、細胞外にHBs抗原に対する一本鎖抗体(αHBs-scFv)を備えており、ウイルス粒子のサブユニットとデーン粒子 (HBVのコア)を認識する。この特異的結合をシグナルとして、コア領域が上図にあるように切断され、Gal4-VP64転写因子を放出し、放出されたGal4-VP64が核へ移行し、UAS配列下に導入した遺伝子の転写・発現を活性化する。
- レンチウイルスベクターシステムでSNRをJurkat細胞へ導入
- SNRが設計通りの機能を発揮することを、レポータ遺伝子 (selNLまたGFP)の発現で実証
- SNRを介したIFNβ、または、HBVに対するマウスとヒトのキメラ中和抗体の発現を実証
- 今後、SNRにおいて伝達されるシグナルの増幅と、in vivoでの検証が必要
シグナル伝達の書き換えに関連するcrisp_bio記事
- crisp_bio 2017-10-02 合成Notch受容体によるシグナル伝達経路の設計と腫瘍免疫療法への展開
- CRISPRメモ_2017/12/27-2 [#9] GPCRとCRISPR-dCasの共役により、細胞シグナル受容・変換器を人工合成
- crisp_bio 2018-06-02 合成Notch受容体を介した人工シグナル伝達カスケードで発生・分化過程を真似る
- crisp_bio 2019-05-05 癌細胞に特異的に異常活性化しているシグナル伝達を、癌細胞を特異的に細胞死へ誘導するシグナル伝達へと書き換える
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