1. CRISPR/Cas9によるエンハンサーの機能解析:線維芽細胞増殖因子8 (Fgf8)の一連のエンハンサー間およびエンハンサー内の冗長性を同定
[出典] "Dissection of the Fgf8 regulatory landscape by in vivo CRISPR-editing reveals extensive inter- and intra-enhancer redundancy" Hörnblad A [..]  Spitz F. bioRxiv 2020-03-03
  • EMBL, Institut PasteurならびにCNRSの研究グループは、Fgf8の発現を制御するエンハンサーとしてマウスにおいて、肢芽先端部の外胚葉性頂堤 (AER)では5種類を、中脳-後脳境界 (MHB)では3種類を同定していた。
  • 今回、in vivo CRISPR編集によって、AERでは一連のエンハンサーの機能が冗長であり、MHBでは3種類のエうち1種類が必須で他の2種類は非必須であることを見出した。さらに、このMHBの主たるエンハンサーの中で2種類の必須サブユニットを特定し、エンハンサー内の冗長性を見出した。
2. ビオチン化したdCas9に基づくCAPTURE1.0システムを改変して、多重な遺伝子座制御領域を同時に解析可能とするCAPTURE2.0に至った
"Multiplexed capture of spatial configuration and temporal dynamics of locus-specific 3D chromatin by biotinylated dCas9" Liu X, Chen Y, Zhang Y [..] Xu J. Genome Biol 2020-03-05
  • 遺伝子発現を制御するゲノムの3次元構造の動態を捉える手法が開発されてきたが、シスエレメント (cis-regulatory element: CRE)におけるクロマチン構造の高分解能なプロファイリングは課題となっている。
  • UT Southwestern Medical Center/UT Dallasを主とする研究グループは先行研究 [*]で開発していた単一の遺伝子座を対象として各CREを制御するプロテオームとゲノムの3次元構造を捉えるシステムCAPTURE1.0に対して、C末端をビオチン化したdCas9 (以下、dCas9-CBio)、内在ビオチン・リガーゼ、および、プール型sgRNAsを利用することで、1回の実験で数百のエンハンサーまたはプロモーターの3次元構造の定量的解析、ひいては、その遺伝子クラスター内および遺伝子クラスター間の比較を可能とする多重化CAPTUREシステム, CAPTURE2.0, を実現した [Fig. 1の一部引用下図参照; 本記事文末に、Xuラボからのツイートのスレッドを引用]。multiplexed CAPTURE
  • CAPTURE2.0によって、赤血球スーパーエンハンサー (SE)の階層的構造ならびにSEと遺伝子間相互作用の各種モードを同定した。
  • また、RNA-seq, ATAC-seq, ChIP-seqおよびCAPTURE-3C-seqによって、多重な遺伝子座における遺伝子発現、クロマチンアクセシビリティ、エピゲノム・ランドスケープ、および、プロモーターからみたクロマチン相互作用のデータを獲得・総合して、発生過程で、エンハンサーとプロモーターのループ形成が、遺伝子発現の活性化または抑制を制御するとした。
  • [*] crisp_bio 2017-08-26 dCas9ビオチン化によるCAPTURE法を開発し、シスエレメントを捉えた
3. プロファージと、バクテリアCRISPR-Casシステムにおける自己免疫応答との間の相関関係
[出典] "Prophages are associated with extensive, tolerated CRISPR-Cas auto-immunity" Nobrega FL, Walinga H, Dutilh BE, Brouns SJJ. bioRxiv 2020-03-04
  • Delft U TechnologyとUtrecht Uの研究グループは今回、100,000種類を超えるバクテリアゲノムを解析し、自己免疫応答をもたらすバクテリアゲノム上のプロトスペーサを標的とするCRISPRスペーサ (self-targeting spacers: STS)が、全てのタイプのCRISPR-Casシステムに見られ、また、CRISPRシステムを帯びているバクテリアの5分の1に存在し、タイプI-BとI-Fタイプではその40%までがSTSを帯びていた。
  • バクテリアゲノムの中で、STSを帯びている殆どがプロファージも帯びており、また、STSがプロファージにマッピングされる例が半数以上を占めた。
  • STSを帯びているゲノムのCRISPR-Casシステムが劣化している例は稀であり、抗-CRISPRタンパク質や標的の変異を介して、STS寛容 (自己免疫応答回避)が成立していることが示唆され、研究グループは、プロファージとSTSが、ファージとバクテリアゲノムの双方にメリットをもたらしたきたことを示唆した。
4. ヒト小腸 (hSI)オルガノイドを対象とするゲノムスケールのプール型CRISPRクリーニング法を確立した上で、その変異が、TGF-βの増殖抑制に対する抵抗性をもたらす遺伝子10種類を同定
[出典] "Genome-Scale CRISPR Screening in Human Intestinal Organoids Identifies Drivers of TGF-β Resistance" Ringel T [..] Schwank G. Cell Stem Cell 2020-03-05
  • ETH Zurich, U Zurichなどのスイスにオランダが加わった研究グループは、野生型と変異型のAPC遺伝子を帯びたhSIオルガノイドを対象とする表題スクリーニングを行った。
  • スクリーニングのからのヒット遺伝子とAPCの間の相乗作用がTFG-βに対する応答を制御し、SWI/SNFクロマチンリモデリング複合体がTFG-βの標的遺伝子へのアクセシビリティーを調節することを見出した。
5. ほぼ一倍体のHap1細胞におけるCRISPR/Cas9スクリーンにより、SPRING/C12ORF49が、ステロール調節配列結合タンパク質 (SREBP)シグナル伝達とコレスレロール代謝の決定因子であることを発見
[出典] "Haploid genetic screens identify SPRING/C12ORF49 as a determinant of SREBP signaling and cholesterol metabolism" Loregger A, Raaben M, Nieuwenhuis J [..] Brummelkamp T, Zelcer N. Nat Commun 2020-02-28

6.  イネ品種改良:CRISPR-Cas9 HDRにより、5.2 kbのカルテノイド生合成カセットをセーフハーバに挿入することで、高含量のカルテノイドを含むイネをマーカーフリーで作出 [Fig. 1引用下図参照]carotenoid-enriched rice
[出典] "Marker-free carotenoid-enriched rice generated through targeted gene insertion using CRISPR-Cas9" Dong OX [..] Ronald PC. Nat Commun 2020-03-04. (UC Davis, Department of Energy Joint Genome Instituteなど) 

[CAPTURE2.0関連ツイートを以下に引用]