[出典] "Computer simulations explain mutation-induced effects on the DNA editing by adenine base editors" Rallapalli KL, Komor AC, Paesani F. Sci Adv 2020-03-04.
ABEは、tRNAのアデノシンを脱アミノ化する酵素 (TadA)を、研究室内進化を介した変異導入によりDNA上のアデニンを脱アミノ化する酵素TadA*へと改変したことで、実現した (TadA*の星印は変異導入を意味する記号)。下図に、ABEがA:T to G⋮Cの塩基対変換を実現するモデル図を今回のSci Adv論文のFig. 1から引用した。
なお、7段階 (ラウンド)の研究内進化を経て、最終的にABE7.10に到達した経緯については、crisp_bio 2017-10-26の記事*にて紹介した :
[*] crisp_bio 2017-10-26 D. R. LiuのDNA1塩基編集法”ABE”とF. ZhangのRNA1塩基編集法”REPAIR”)。
なお、7段階 (ラウンド)の研究内進化を経て、最終的にABE7.10に到達した経緯については、crisp_bio 2017-10-26の記事*にて紹介した :
[*] crisp_bio 2017-10-26 D. R. LiuのDNA1塩基編集法”ABE”とF. ZhangのRNA1塩基編集法”REPAIR”)。
CBEとABEの開発に携わり、Pairwise Plants and Beam TherapeuticsのコンサルタントでもあるAlexis C. Komorらを含むUCSDの研究チームは今回、分子動力学シミュレーションと実験検証により、導入された一連の変異がssDNA上のアデニン編集を可能にした機構を明らかにした。
- ABE7.10でCas9ニッカーゼ (Cas9n)に融合させたTadA*は、野生型TadAに対して14種類の点変異を帯びている。
- 初期に導入された一連の変異が、複雑なコンフォメーション変化を誘導し、構造の柔軟性が抑制されることが明らかになった。
- TadA-Cas9nはssDNAに対して酵素活性を全く示さないが、研究室進化の第1ラウンドと第2ラウンドで同定した変異 (Asp108Asn, Ala106Val, Asp147Ty, およびGlu155Val)がすでに、 TadA*にDNA編集活性をもたらしていたことが明らかになった [Fig. 4引用左下図およびFig. 5引用右下図参照]。
- Asp100Asnの変異を戻す効果を見るreversion analysisを加えた結果からも、Asp100AsnがTradA*の活性ひいてはA:T to G⋮Cの変換効率に決定的な役割を担っていることが明らかになった。
- また、TadA*が二量体ではなく単量体としてssDNA塩基編集を遂行することも明らかになった。
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