[出典] "Unconstrained genome targeting with near-PAMless engineered CRISPR-Cas9 variants" Walton RT, Christie KA, Whittaker MN, Kleinstiver BP. Science 2020-03-26.
背景
- CRISPR-Cas9による遺伝子工学と臨床応用にあたって、オフターゲット編集の抑制と共に、PAMによる標的可能領域の制約を緩めていくことが課題であった。
- 後者についてこれまでに、指向性進化法や構造情報に基づく合理的設計に基づいたSpCas9変異体作出や、Cas12などの異なるCasタンパク質の利用により、標的可能な領域が広げられてきた。
- Massachusetts General Hospitalの研究チームは、これまでのSpCas9変異体では標的不可能なゲノム領域がまだまだ残っているとして、今回、PAMと相互作用するSpCas9のドメイン (PAM-interacting domain: PIドメイン)の構造に基づいた変異導入を介して"nearly PAMless" SpCas9変異体を実現した。
これまでのPAM拡張SpCas9変異体
- SpCas9-VQR, VRQR, VRER: 2018-01-17 Cas9への変異導入によってPAMの拡張が可能になる構造基盤
- SpCas9-NG: 2018-08-31 SpCas9-NG:SpCas9の標的範囲をさらに広げる合理的な変異導入
- xCas9: 2018-03-02 xCas9:PAMの拡張とオフターゲット抑制を両立
HT-PAMDA
- 研究グループはこれまでのPAM拡張SpCas9変異体の変異を評価した結果、SpCas9-VRQRをベースとして選択した上で、ハイスループットPAM判定法 (high-throughput PAM determination assay: HT-PAMDA)を開発し、PIドメイン上でPAMとの結合に決定的な5残基 (D1135, S1136, G1218, E1219, およびT1337)の置換を評価した。
NGN PAM標的SpG
- 始めに、カノニカルPAMのNGGの2番めのGの自由度を広げるSpGを同定した。SpGは、D1135L/S1136W/G1218K/E1219Q/R1335Q/T1337Rの置換を帯び、NGA, NGC, NGG, およびNGT PAMsに依存する活性の変動が最も低い (4種類のPAMsに対して同程度な活性を発揮する)SpCas9変異体である。
- なお、SpGにSpCas9-NGにおいて非選択的DNA相互作用を亢進するL1111RとA1322Rをさらに加えると、 HEK293T細胞での編集活性が失われた。
- SpGは、HT-PAMDAアッセイに加えて、HEK293T細胞において、4種類のPAM領域の標的に対して、実際に高い活性を示した。また、他のヌクレアーゼと比較したところ、SpGがNGM PAMsのいずれに対しても最も安定した編集活性 (SpG > SpCas9-NG > xCas9)を示した (NGG PAMに対してはSpCas9野生型 (WT)が最も高活性)。さらに、SpGはCBEとABEに組み込んでも、高活性を示した。
NRN PAM標的SpRY
- SpGによって標的可能なゲノム領域が拡がったが、それでも、標的不可能なゲノム領域が残されていることから、SpGをスキャフォールドとして、NAN PAM認識を可能とするために、PIドメインのR1333をグルタミン (Q)に置換することを試みた。SpG(R1333Q)は失活したが、意外にも、SpGを失活させたSpCas9-NGの変異L1111RとA1322Rが、SpG(R1333Q)には活性をもたらすことを見出した。そこで、その他の残基において非選択的DNA相互作用を亢進する置換も評価し、SpG(L1111R/A1322R)にA61R, N1317R, およびR1333Pの置換を加えたSpRY (編集活性:NRN PAM領域 > NYN PAM領域)に到達した。
- HEK293T細胞において、NGG PAM領域を除くNRN PAMs領域において、SpRYがSpCas9やWTよりも高活性を示し、また、NGN PAM領域についてSpGに近い活性を示した。SpRY-CBEは、NRN PAMs領域に対して平均38.0%のC-to-T変換効率を示し、SpRY-ABEは、平均34.7%のA-to-G変換効率を示した。
- SpGとSpRYのオフターゲット編集活性をGUIDE-seqで評価し、Kleinstiverらが先行研究で開発していた高精度版SpCas9-HF1 [*]の変異を導入することで、ほとんど全てのオフターゲット候補部位での編集活性が抑制されることを確認した [* 2017-06-15 SpCas9-HF (1-4):ゲノム編集の精度をさらに向上させるハイファイ (high-fidelity) CRISPR/Cas9]。
これまで編集不可能であった疾患関連遺伝変異の修復を実現
- 冠状動脈性心疾患、2型糖尿病、 慢性疼痛などの疾患に関与する遺伝子変異のCBEによる修復を試みた。
- NGG PAM領域での検証:MSTN IVS1の場合 - NGG標的WT-CBE バイスタンダー編集の発生で不可; NGC/NAT PAM標的SpG-CBEsとSpRY-CBEsは問題なし
- NGG PAM領域以外8ヶ所での検証:WTは7ヶ所で不可; SpGとSpRY-CBEにより8ヶ所全てについてバイスタンダー編集を回避して標的のC−to−T置換可能に
Ben Kleinstiver@BKleinstiver
Very excited to share our 1⃣st publication from the lab - the development of near PAMless CRISPR-Cas9 variants. Hu… https://t.co/yxutfbehia
2020/03/27 02:59:59

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