[出典] "Extinction of all infectious HIV in cell culture by the CRISPR-Cas12a system with only a single crRNA" Gao Z, Fan M, Das AT, Herrera-Carrillo E, Berkhout B. Nucleic Acids Res 2020-04-13.
University of Amsterdamの研究グループは、HIV-1のゲノムDNAを標的とするCas9-sgRNA (単一)によって、HIV-1の複製と培養細胞感染を阻害可能であるが、同時に、エスケープ (逃避変異型)が発生することを見出し [1]、その後、Cas9に2種類の特定なsgRNAsを組み合わせることで、プロウイルスを感染に除去可能なことを示してきた [2]。
研究グループは今回、Cas12a (Cpf1)の特徴に注目し、ヒトゲノムに潜在しているプロウイルスDNAの不活性化の性能をCas9システムと比較し、Lachnospiraceae bacterium由来Cas12a (LbCas12a)に単一のcrRNAを組み合わせることで、プロウイルスDNAを除去しゲノム編集によるHIV感染症治癒の可能性を示した。
Cas9に対するCas12aの特徴
- 標的配列に対する選択性が高く、オフターゲット編集が抑制される。
- システムのサイズが小さい (LbCas12a ~ 3.7-kb + crRNA 43-nt: SpCas9 ~4.1-kb + gRNA~100-nt)
- Cas9で標的不可能な領域を標的可能になる (PAM配列: Cas12a TTTN; SpCas9 NGG)
- DNA切断結果 (Cas12a 突出末端; Cas9 平滑末端)
crRNAの選定
- HIV-1のLAI株のDNAゲノム配列をBenchling CRISPR Guide Design Softwareで解析した結果から、保存性が高い領域を標的とするcrRNAsを、センス鎖とアンチセンス鎖それぞれについて10種類と13種類設計した。その中で、それぞれ5種類と1種類は、ウイルスゲノムに隣接するLTR (Long Terminal Repeat)であった。
- HEK293T細胞にpLAIとCas12a-crRNAのプラスミドを導入し、HIV CA-p24タンパク質のノックダウンが50%を超えた8種類のcrRNAs (標的: LTR1, LTR2, LTR3, Gag1, Vpr2, Tat1, Tat2およびTatRev) について実験を進めた (言い換えると、100%のノックダウン(ノックアウト)には至らなかった)。
T細胞株SupT1におけるHIV阻害
- SupT1細胞にCas12aと単一crRNAをレンチウイルスベクターで導入し、HIV LAI株を感染させコントロールと比較する実験を行い、8種類のcrRNAのHIV阻害性能を再評価し(Figure 2引用下図参照)、

Tat2, TatRev, Tat1とGag1を標的とするcrRNAが、それぞれ、6件の培養実験のうち6, 3, 1と1件 (計 11件)について、60日間HIV複製を阻害する結果を得た。 - この11件について、Cas12a-crRNAを導入していないSubT1細胞への感染が、Cas12-crRNAを導入後60日の培養細胞 (以下、60日培養)からは見られないことを確認した。また、HIVゲノム配列について、60日培養には、indels変異の件数が30日培養から増加して数十に達し、野生型ゲノム配列が存在しないことを見出した。60日培養の点変異の件数は30日培養から減少し、これは、Cas12a-crRNAによる再編集によるとした (Table 1引用下図参照)。

Cas12に独特な変異プロファイル
Cas12a-crRNAによりHIVキュアが実現する機構
- 以上、Cas12aは、HEK293T細胞でのアッセイでは、HIV LAI株をキュアするに至らなかったが、T細胞の培養実験ではHIVをキュアするに至った。
- 研究グループの仮説:Cas9は、主としてシード配列とPAM近位に変異を誘導し、Cas9による再切断を回避可能な変異体が発生し、ひいては単一gRNAからのHIVエスケープを可能にする。Cas12aは、主として、crRNAの認識に関与する領域以外の領域に変異を誘導することから、変異したHIVを切断し続け、T細胞の培養実験では、キュアが実現された (Figure 8引用下図参照)。

- 研究グループはさらに、Cas9とCas12aのdsDNA切断 (DSB)後に残るDNA末端の違いが、DSBの修復過程に違いをもたらし、その結果、Cas9とCas12の変異プロファイルにも違いが生まれるとした(Figure 9引用下図参照)。

[引用・参考crisp_bio記事- いずれもBerkhoutグループの報告]
- CRISPR関連文献メモ_2016/02/03 #1.プロウイルスDNA切断を生き延びるHIV-1
- CRISPR関連文献メモ_2016/12/21 #1. HIV-1 DNAの2箇所を同時に標的とすることでT細胞からプロウイルス(provirus)を完全に除去
- CRISPRメモ_2017/08/07 #2. [レビュー] CRISPR-Cas技術による抗HIV-1療法
- CRISPRメモ_2018/04/05 #6. [レビュー] HIV持続感染に取り組む:"shock and kill"療法には薬理かCRISPR技術か
- CRISPRメモ_2019/03/20-1 #2.HIV-1の遺伝的多様性が、CRISPR-Cas9の抗ウイルス活性とウイルスのエスケープに与える影響

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