1. [ハイライト] CRISPR遺伝子編集に光を当てる
CRISPR-Cas9の活性を時空間制御する工夫が続けられてきたが、2つのグループが独立に、光ケージ化したgRNAを介した制御を実現した:
CRISPR-Cas9の活性を時空間制御する工夫が続けられてきたが、2つのグループが独立に、光ケージ化したgRNAを介した制御を実現した:
- "Photoswitchable gRNAs for Spatiotemporally Controlled CRISPR-Cas-Based Genomic Regulation" Moroz-Omori EV [..] Stevens MM. ACS Cent Sci 2020-04-01.
- "Spatiotemporal Control of CRISPR/Cas9 Function in Cells and Zebrafish using Light-Activated Guide RNA" Zhou W [..] Deiters A. Angew Chem Int Ed Engl 2020-03-11.
- Stevensグループ [1]とDeitersグループ [2]は、光分解性の低分子をCRISPR-Cas9活性の阻害因子として、それぞれ、crRNA-tracrRNAまたはgRNAのプロトスペーサに結合する領域内の特定の塩基 (T; GとU)に結合しておき、細胞核内に入り込んだ後に適宜*、DNA, RNAそして細胞を損傷しない光を照射することで、CRISPR-Cas9を活性化する [* この活性化は、CRISPR-Cas9システムをデリバリーしてから数日の間いつでも可能]。
- Stevensグループは、光ケージ化の手法を、in vitroでの標的DNA切断, 細胞内の遺伝子編集, 細胞内での蛍光タンパク質活性化 (CRISPRa)およびゼブラフィッシュ胚での遺伝子編集で実証した。Deitersグループも、HEK93T細胞とゼブラフィッシュ胚において精密な時空間制御を実証した。
[出典] "Shining Light on CRISPR Gene Editing" Taemaitree L, Browan T. ACS Cent Sci 2020-04-14.
2. CRISPR-dCas9をもとにしたインピーダンス測定型バイオセンサーにより、循環腫瘍DNA (circulating tumor DNA; ctDNA)のラベルフリー検出を実現
- Ege University (トルコ)の研究チームは今回、酸化グラフェン製のスクリーン印刷電極電極 (GPHOXE)への共有結合性修飾を介してdCas9-sgRNAを固定し、電気化学インピーダンス分光法 (electrochemical impedance spectroscopy, EIS)により、PIK3CA遺伝子の第9エクソン変異検出を実現した。検出限界 (LOD)が0.65 nM、定量下限 (LOQ)が1.92nMであった。
- 乳癌患者由来検体でその性能 (高精度, 高感度, 反復可能性)を実証した。
[出典] "CRISPR-dCas9 powered impedimetric biosensor for label-free detection of circulating tumor DNAs" Uygun ZO, Yeniay L, Sagin FG.Anal Chim Acta 2020-04-16.
3. ゲノムワイドCRISPRスクリーンにより、オーロラキナーゼ阻害剤と合成致死の相乗効果をもたらす標的遺伝子を同定
- オーロラキナーゼは抗癌剤の標的として注目を集めている。VX-860はオーロラキナーゼを阻害するがその臨床有効性は不十分である。U. Texas MD Anderson Cancer Centerの研究グループはVX-860との併用で合成致死をもたらす標的遺伝子をスクリーンし、GSG2 (セリン/スレオニンプロテインキナーゼのハスピン)を同定した (GSG2は、有糸分裂の際にヒストンH3のThr03をリン酸化することが知られている)。
- さらにハスピンをノックアウトまたはハスピン阻害剤を投与したHT116細胞が、オーロラキナーゼB (AURKB)を介して、VX-860に対して高感受性を示すことを明らかにした。
[出典] "Genome-wide CRISPR screen uncovers a synergistic effect of combining Haspin and Aurora kinase B inhibition" Huang M [..] Chen J. Oncogene 2020-04-16.
4. HIV-1患者由来iPSCのゲノム編集により、HIV-1感染を阻害する免疫細胞を生成
- UCSFの研究グループは今回、抗HIV療法 (antiretroviral therapy, ART)下にある患者由来の末梢血単核細胞からiPSCを樹立し、TALENまたはCRISPR/Cas9とPiggyBac技術を組み合わせて、CCR5遺伝子から自然変異に見られる32-bpを削除すると、造血幹細胞がHIV感染から保護されることを見出した。
- ゲノム編集したiPSCsは、免疫細胞サブセット、特にマクロファージ、へと分化させ、CCR5指向性またはCCR5/CXCR4両指向性 HIV-1でチャレンジした。
5. ヒト遺伝疾患のCRISR/Cas遺伝子治療技術の進展
浙江西湖高等研究にUMMSが加わった研究グループCRISPR/Cas, CRISPRaとCRISPRiおよびBase Editors技術を概観した後、遺伝疾患治療の試みをレビュー(前臨床試験および臨床試験の一覧表あり)
[出典] "Advances in CRISPR/Cas-based Gene Therapy in Human Genetic Diseases" Wu SS, Li QC, Yin CQ, Xue W, Song CQ. Theranostics 2020-03-15.
6. SPLCV(サツマイモ葉巻ウイルス) レプリコンに基づく発現ベクターを介して植物における効率的RNA編集ならびに遺伝子編集を実現
- ベンサミアナタバコをモデルとして、LwaCas13aとLbCas12aならびにSpCas9にて実証
[出典] "Improving CRISPR-Cas-mediated RNA targeting and gene editing using SPLCV replicon-based expression vectors in Nicotiana benthamiana" Yu Y, Wang X, Sun H [..] Li Z, Sun J. Plant Biotechnol J 2020-04-14.
7. シアノバクテリア由来I-Dシステムを解析
- CRISPR-Casシステムの応用が拡がっている一方で、多くのCRISPR-Casシステムの解析が置き去りになっている。
- U. OtagoとU. Texas at Austinの研究グループは今回、標題システムのCascadeが化学量論的にはタイプI複合体に、全体の構成はタイプIII複合体に類似したキメラ複合体であること、および、cas10dORF内での内部翻訳開始から小型のサブユニットCas11dの発現が誘導されることを見出した。
[出典] "Internal translation of large subunit transcripts drives small subunit synthesis in type I CRISPR-Cas interference complexes" McBride TM, Schwartz EA [..] Fagerlund RD. bioRxiv 2020-04-18.
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