[出典] "Chemical modifications of adenine base editor mRNA and guide RNA expand its application scope" Jiang T [..] Xue W. Nat Commun 2020-04-24.
病因性一塩基変異のほぼ半数をG·C-to-A·Tの塩基対置換が占めていることから、A·T-to-G·C変換を実現する塩基エディターABEは、病因変異の修復および病因変異を帯びたモデル作出に有用である。事実、ABEのさまざまなバリエーションが開発・利用されているが、一方で、効果的な変換にはABEの高発現が必要なため、トランスフェクションが困難な細胞など、ABE DNAプラスミド・デリバリーには限界があった。
これまでのABEによる治療可能性を探る研究は、疾患モデル動物に、ABEをコードしたDNAをプラスミドまたはAAVsでデリバリーする手法に基づいていた。この手法はしかし、ABEの発現に比較的長い期間細胞を曝露する間に、ABE DNAのゲノムへの組込みやオフターゲット作用のリスクを伴っていた。そこで、ABEのmRNAのデリバリーやAAVなどのウイルスベクターに依存しないデリバリー法の検討が待たれていた。
C·G-to-T·A変換を実現するCBEの場合は、マウス胚やブタ卵母細胞において、CBE mRNAとin vitro転写sgRNAのマイクロインジェクションによって、効率的な塩基編集が実現されたが、ABE mRNAのデリバリーによる塩基置換の検証はこれまで行われて来なかった。
RNA Therapeutics Institute (UMMS)、Cystic Fibrosis Foundation、Broad Instituteなどの研究グループは今回、先行研究で開発したコドン最適化ABE6.3 (reassembled ABE6.3, RA6.3) [*] を対象として、ABE mRNAとgRNAの双方への化学修飾を最適化することで、いくつかの遺伝子座にて、DNAのデリバリーよりも効率的な変換が可能なことを実証した。
Fig.1を引用した下図に、5'キャピング mRNA、同義コドンを利用して転写物からウリジンを可能な限り欠損させるmRNA、および、ウリジン欠損mRNAで未だ残っているとウリジンを5-メトキシウリジン修飾 (5moU)に置換したmRNAでデリバリーする効果がまとめられている。
Fig.1を引用した下図に、5'キャピング mRNA、同義コドンを利用して転写物からウリジンを可能な限り欠損させるmRNA、および、ウリジン欠損mRNAで未だ残っているとウリジンを5-メトキシウリジン修飾 (5moU)に置換したmRNAでデリバリーする効果がまとめられている。

さらに、トランスフェクションが困難とされてきた嚢胞性線維症気管支上皮細胞において安定した変換を実現した。さらに、化学修飾したABE mRNAとgRNAそれぞれの脂質ナノ粒子を尾静脈注射を介して、チロシン血症I型モデルマウスの肝臓にデリバリーし、病因性のスプライス部位の変異を修復しフェノタイプ回復に至った。
[* 引用文献] "Adenine base editing in an adult mouse model of tyrosinaemia" Song, C.-Q. et al. Nat Biomed Eng 2019-02-25.
[* 引用文献] "Adenine base editing in an adult mouse model of tyrosinaemia" Song, C.-Q. et al. Nat Biomed Eng 2019-02-25.
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