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[出典] "Structural Basis for Potent Neutralization of Betacoronaviruses by Single-Domain Camelid Antibodies" Wrapp D, De Vlieger D [..] Schepens B, Saelens X, McLellan JS. Cell 2020-05-05[構造情報] 6WAR Crystal structure of the MERS-CoV RBD bound by the neutralizing single-domain antibody MERS VHH-55  (3.4 Å); 6WAQ Crystal structure of the SARS-CoV-1 RBD bound by the cross-reactive single-domain antibody SARS VHH-72 (2.2 Å);  [参考 ナノボディ(VHH抗体) ] 

 U Texas at Austin, NIAID/NIH, Geisel School of Medicine, VIB-UGent Center for Medical Biotechnology, Ghent U, Leibniz Inst Primate ResearchならびにU Göttingenのベルギー・米・ドイツの研究グループは、ラマを、SARS-CoV-1 Sで2回、MERS Sで2回、SARS-CoV-1 Sで1回、最後に、SARS-CoV-1 SとMERS-CoV Sと、7時間ごとに皮下注射することで免疫することから始めた (Sは、ここでは、受容体に結合前の状態に安定化したスパイクタンパク質を意味する)。
 続いて、SARS-CpV-1 SまたはMERS-CoV Sを利用したファージディスプレイによるパンニング (panning)を介して、SARS-CoV-1 SとMERS-CoV Sに対するナノボディ/VHHsを獲得し、それらの配列解析とマルチプルアライメントを経て、ユニークなVHHsをそれぞれ5種類と7種類同定するに至った。これらのVHHsをPichia pastorisで発現させ、酵母培地で精製し、それぞれのSに対する結合をELISAで確認し、実験を進めた。
  • VHHsのMERS-CoV England1 SとSARS-CoV-1 Urbani Sのシュードレンチウイルスに対するin vitro中和活性、および、組換え体に対する結合親和性の分析から、Sタンパク質のヒト細胞表面受容体ACE2への結合ドメイン (RBD)に高い結合親和性を示しかつそれぞれのCoVに高い中和活性を示すSARS VHH-72MERS VHH-55について、それぞれのRBDとの複合体構造解析へ進み、VHHが、ヒト細胞表面受容体ACE2への結合を阻害する分子基盤を論じた。[PDB公開構造下図参照]6AWQ
  • SARS VHH-72は、表面プラズモン共鳴法ではSARS-CoV-2 RBDに高い親和性を示したが、ELISAでは両者の相互作用を検出できず、また、SARS-CoV-2 Sシュード水ほう性口内炎ウイルス (VSV)シュードウイルスを中和しなかった。
     そこで、脱離速度を抑制することを目的として、2つのSARS VHH-72をリンカーで結合した2価VHHと、VHHにヒトIgG1のFcドメインを結合した(VHH-72-Fc)の2価VHHの中和活性を評価した。その結果、VHH-72-Fcが、SARS-CoV-1とSARS-CoV-2のS VSVシュードウイルスに対して中和活性を示すことを見出した、また、固定化した SARS-CoV-2 RBD-SD1に結合することをバイオレイヤー干渉法 (BioLayer Interferometry, BLI)で確認することができた。
  • タンパク質生産に利用されるCHO細胞システムで生産したVHH-72Fcは、IC50値 ~ 0.2 mg/mL を示し、また、CHO細胞システムでの大量生産可能なことが示唆された。

[出典] プレスリリース「大村智記念研究所片山和彦教授ら研究グループが新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対して感染抑制能(中和能)を有するVHH抗体の取得に成功北里大学 2020-05-07
  • 北里大学は、花王およびEpsilon Molecular Engineering (EME)と共同で、SARS-CoV-2に対して感染抑制能 (中和能)を有するVHH抗体の取得に成功したと発表した。
  • 花王はEMEが開発していたcDNAディスプレー法に基づいて、SARS-CoV-2 Sタンパク質のS1サブユニットを標的とするVHH抗体候補をスクリーニングし、BLIで、アルパカ由来の候補VHHのS1タンパク質への結合親和性を確認した。
  • 続いて、北里大学において、候補VHH抗体のSARS-CoV-2への結合と感染抑制能を確認した。
  • なお、報道によれば、このVHHはアルパカ由来である。
[新型コロナウイルス中和抗体関係crisp_bio記事]
  • crisp_bio 2020−04−10 新型コロナウイルス感染症 (軽症)から回復した175名が帯びていた中和抗体のデータから見えてきたこと
  • crisp_bio 2020-03-14 新型コロナウイルス:SARS-CoV-2の感染を阻害し中和するヒト・モノクローナル抗体を作出
  • crisp_bio 2020-03-11 新型コロナウイルス, SARS-CoVのスパイクのサブユニットS2に対するモノクローナル抗体に反応
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