[出典] "Early Safety Indicators of COVID-19 Convalescent Plasma in 5,000 Patients" Joyer MJ et al. medRxiv 2020-05-14. (査読なし投稿); 臨床試験 NCT04338360
背景
- 米国におけるCOVID-19入院患者の死亡率はニューヨーク市の21%からシアトルの初期の50%までに至る。COVID-19アウトブレイクとこの死亡率からFDAはMayo Clinicならびに国立の血液銀行と協力して、COVID-19から回復した個人の血漿を集積し投与するプログラム Expanded Access Program (EAP) を開始した。
- 回復者の血漿に含まれる抗体がもたらす治療効果に期待するこの受動的抗体療法には長い歴史があり、ワクチンや抗体薬が存在しない感染症対策として、生物学上妥当な手法であり、SARS-CoV-1について香港から、80名と小規模な患者集団であるが、その効果が報告されていた。
- しかし、大規模な安全性評価が欠けていた。そこで、Mayo Clinicの各部門にミシガン州立大学とJHUが加わった研究グループは、EAPの枠組みの中で、5,000名の重度または重篤な入院患者に血漿療法を加え、その結果を、データを広く共有するために査読なしオープンジャーナルmedRxivに投稿した。
対象集団と血漿療法の結果
- EAPの枠組みにおいて、2020年4月3日から5月11日までの間に重度または重篤またはそうなるリスクが高い入院患者14,288名集団の中の8,932名に、回復者の血漿を輸血し、そのうち、早期の輸血した5,000名についてのデータを分析した。
- このコホートの平均年齢は62歳 (18-97歳)であり、男性と女性それぞれ3,153名と1,824名であり、人種は主としてコケージャン (49%)とアフリカン・アメリカン (18%)であった。
- 輸血後4時間以内の重篤な有害事象 (serious adverse event, SAE)発生率は低く死亡を含めて<1%であり、輸血後1週間での死亡率は14.9%であった。
- 前述のSAEs 36件は、死亡 4例、輸血関連循環過負荷 (transfusion associated circulatory overload: TACO) 7例、輸血関連急性肺障害 8transfusion-related acute lung injury: TRALI) 11名、重篤なアレルギー反応 3例であったが、血漿療法が直接の原因と判定されたSAEsは2例 (< 0.1%)にとどまり 、血漿療法の安全性は高いと判定された。
- 血漿療法の効能について研究グループは楽観的にみているが、この報告は効能を実証したわけではない。
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