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論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

[出典] "A noncompeting pair of human neutralizing antibodies block COVID-19 virus binding to its receptor ACE2" Wu Y, Wang F, Shen C, Peng W, Li D [..] Gao GF, Gao F, Liu L. (medRxiv 2020-05-07) Science 2020-05-13[構造] 7BZ5 Structure of COVID-19 virus spike receptor-binding domain complexed with a neutralizing antibody (1.84 Å) 

 中和抗体はCOVID-19パンデミック対策に有効な抗ウイルス薬である。中国科学院病原微生物・免疫学重点実験室を中心とする中国研究グループは、回復期のCOVID-19患者から、中和能を帯びている4種類のモノクローナル抗体 (以下、B38, H4, B5, H2)を分離し、そのうち2種類 (B38とH4)が中和能の相乗効果を示すことを同定した。
  • B38とH4は、SARS-CoV-2スパイク (S)タンパク質の受容体結合ドメイン (RBD)とヒト細胞受容体ACE2との結合を阻害することを同定した。
  • また、B38とH4が認識するRBD上のエピトープが異なることを、競合結合アッセイから同定し、臨床応用にあたって、このペアを併用することで、SARS-CoV-2の免疫回避を長期にわたり阻止することが可能とした [Vero E6細胞における相乗効果についてFig. 2引用下図 E 参照]。Fig. 2
  • 加えて、マウスモデルのウイルスが感染した肺においてB38とH4がウイルス力価を下げることを同定した。
  • RBD-B38の複合体構造解析から、B38が結合するACE2上のエピトープを構成する残基のほとんどが、RBDが結合するACE2結合界面に重なっていることも同定し、その阻害能と中和能の構造基盤も明らかにした。
[参考図]
  • RBDとB38結合の様子についてPDB RCSB Webサイトからキャプチャした下図参照PDB RCSB 7BZ5
  • SARS-CoV-2とSARS-CoV-1 RBDのアミノ酸配列アライメントと2次構造情報についてFig. S3引用左下図参照; SARS-CoV-2 RBDとB38の残基コンタクトについてTable. S3引用右下図参照
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