[出典] "A reference map of the human binary protein interactome" Luck K, Kim DK, Lambourne L, Spirohn K [..] Hill DE, Vidal M, Roth FP, Calderwood MA. (bioRxiv 2019-04-10 ) Nature 2020-04-08
[Web サイト] 
HuRI: The Human Reference Protein Interactome (下図参照)
HuRI
 近年、ゲノムトランスクリプトームならびにプロテームのデータが大量に蓄積されてきたが、表現型、特にその組織依存性または細胞型依存性、をもたらす細胞機能と分子機構の解明はその緒についたところである。
 このギャップを埋める大規模なタンパク質間相互作用 (PPI)のデータベース'HuRI'が、Dana-Farber Cancer InstituteのCenter for Cancer Systems Biology (CCSB)とUniversity of Torontoを主とする米国とカナダの研究機関に、スペイン、ベルギー、フランスおよびイスラエルの研究機関も加わった88名の共同研究グループによって構築・公開された。
  • 研究グループは先行研究にて、4,303種類のタンパク質間のペアワイズ相互作用13,944種類を網羅したデータベースHI-II-14HuRIを公開していた [*]。HuRIはそのほぼ4倍の規模である。 ["A Proteome-Scale Map of the Human Interactome Network" Rolland T, Tasxan M, Charloteaux B, Pevzner SJ, Zhong Q, Sahni N, Yi S [..] Roth FP, Vidal M. Cell 2014-11-20 (PubMed Central)]
    • HuRIは、17,408種類のタンパク質をコードする遺伝子を対象とする相補的な3種類の酵母ツーハイブリッド法 (Y2H)による総当りの実験と、Y2Hと直交する実験法であるMAPPITGPCA、文献からの高信頼性データとの対照を経て、8,275種類のタンパク質間ペアワイズ相互作用52,569種類を特定した結果である [実験ワークフロー Fig. 1参照]
    • 研究グループは、HuRIのデータと、ゲノム 、トランスクリプトーム ならびにプロテオームのデータを融合することで、健常な表現型ならびに疾患に関わる表現型をもたらす細胞機能や分子機構の解明が加速されるとした。
       具体的に、相互作用するタンパク質の共有度をもとにした機能未知タンパク質の機能推定に加えて、新規疾患関連PPIの発見、細胞外小胞の生合成またはそのカーゴの呼び込みに関与するタンパク質の同定、35種類の組織におけるPPIマップ (それぞれ~25,000PPIsを含む)構築 [Extended Data Fig. 8参照
      ]を、例示した。
    • 一方で、HuRIがカバーしたのは、ヒトタンパク質のバイナリPPIの2~11%であり、翻訳後修飾に依存するPPIのようにヒト細胞には存在するが酵母には存在しない因子が介在するPPIや、現在の技術では検出できない極めて弱いPPIや極めて短時間のPPIに伴う課題を、研究グループは指摘した。