2021-09-11 実験プロトコル論文の書誌情報と概要を追記
"In vitro Cleavage and Electrophoretic Mobility Shift Assays for Very Fast CRISPR" Zou RS, Liu Y, Ha T. bio-protocol. 2021-09-05. https://doi.org/10.21769/BioProtoc.4138
vfCRISPRにおけるCas9の標的DNAヘの結合と切断を評価するアッセイ法: Cas9とgRNAのRNPを形成した後,標的DNAとインキュベートし,ゲルシフトアッセイ (EMSA)に持ち込み,Cas9 RNPの結合によってシフトしたターゲットDNAのバンドを可視化する; 切断の有無を,Proteinase Kを加えてRNPを分解して標的DNA (切断されたものとされていないもの)が,その分子量に応じて移動させることで判定; 95℃で加熱することでRNPが急速に不活性化されることを利用して,Cas9の切断速度を時間分解して測定;このプロトコールにより,フォトケージしておいたvfCRISPR gRNAの光活性化メカニズムの特徴を明らかにすることができる.
vfCRISPRにおけるCas9の標的DNAヘの結合と切断を評価するアッセイ法: Cas9とgRNAのRNPを形成した後,標的DNAとインキュベートし,ゲルシフトアッセイ (EMSA)に持ち込み,Cas9 RNPの結合によってシフトしたターゲットDNAのバンドを可視化する; 切断の有無を,Proteinase Kを加えてRNPを分解して標的DNA (切断されたものとされていないもの)が,その分子量に応じて移動させることで判定; 95℃で加熱することでRNPが急速に不活性化されることを利用して,Cas9の切断速度を時間分解して測定;このプロトコールにより,フォトケージしておいたvfCRISPR gRNAの光活性化メカニズムの特徴を明らかにすることができる.
2020-06-12 初稿
[出典] "Very fast CRISPR on demand" Liu Y, Zou RS [..] Wu B, Ha T. Science 2020-06-11. (Accepted 2020-04-14); PERSPECTIVE "CRISPR at lightning speeds - Breaking the genome with the flick of a (light) switch" Medhi D, Jasin M. Science 2020-06-12. 概要
- これまでにCRISPR-Cas9の活性を時空間制御するさまざまな工夫がされてきたが [1-4]、JHUの研究グループは今回、Cas9をガイドするcrRNA-tracrRNA (gRNA)の標的プロトスペーサに結合する領域の特定の塩基に、光分解性低分子 6-nitropiperonyloxymethyl (NPOM) を結合する手法を採用し、細胞毒性を伴わない波長の光 (365 または 405 nm)を照射することでCRISPR-Cas9の活性化を実現した。
- 著者らはこのケージ化したgRNAをcgRNAと称し、また、Cas9の活性の時空間制御を秒単位とサブマイクロメータのレベルで可能としたこの手法をvery fast CRISPR (vfCRISPR)と称した。
- CRISPRメモ 2020/04/24 [第1項] [ハイライト] CRISPR遺伝子編集に光を当てる - Science論文がアクセプトされたと同日の2020年4月14日にACS Cnt Sci誌からか刊行されたハイライト記事であり、cgRNAと同じ手法の2論文を紹介している。
- 2019-06-10 RNAでgRNAを御し、バクテリアとヒト細胞においてCRISPRi/aを御す - cgRNA (conditional gRNA: cgRNA)
- 2017-09-17 dCas9をベースとした光刺激転写活性化システム第2世代へ:神経細胞の分化誘導も可能に - dCas9のスプリットやdCas9と転写活性化因子とのスプリットと、青色光によるその一体化 (活性化)を利用する制御法
- CRISPR関連文献メモ_2016/03/27 [第1項] [ミニレビュー] CRISPR/Cas9機能の時空間制御 - 低分子または光によるCas9の活性制御をレビュー
vfCRISPR (Cas9-cgRNA)の活性が光制御される仕組み
- cgRNAは、プロトスペーサ内のPAM近位のシード配列の領域と結合できるが、PAMから遠位との結合は、NPOMによって立体障害される。このため、Cas9が活性を発揮する前段階と成るcgRNAと標的DNAとのR-ループ形成が阻害されることになる。
- 光照射を受けてNPOMが分解すると、cgRNAが標的プロトスペーサと全長にわたってハイブリダイゼーションすることが可能になり、R-ループが形成されてCas9のエンドヌクレアーゼドメインHNHの大規模なコンフォメーション変化が誘導され、ひいては、Cas9が標的二本鎖を切断するに至る。
- こうして、vfCRISPRによって、光を介して二本鎖DNA切断 (DSB)を秒とサブマイクロメータのオーダーで時空間制御することが可能になった。
vfCRISPRによるDNA修復過程の動態解析
- vfCRISPRに光照射することで数秒でDNA分子の半数が切断され切断部位に効率的に変異が誘発された。
- 単一細胞蛍光イメージングから、53BP1修復fociの形成と分解のサイクルが繰り返される部位が存在することを発見した。
- 時間分解ChIP-seq (trChIP-seq)から、損傷部位へのシグナル伝達や修復に関わる因子群のリクルートおよび損傷部位での保持に関する知見を得た。この中で、DNA損傷の初期過程に関与するとされているMRE11が、DNAライゲーション後も保持されることを見出した。
- DSBsの代表的マーカであるリン酸化ヒストンH2AX (γH2AX)の伝搬速度に、~150 kb/minと高速な~460 kb/minの2種類が見られ、DSBから30Mbの部位まで1時間で到達することを見出した。
アレル特異的編集
- Cas9に蛍光タンパク質GFPを融合しておくことで、特定の遺伝子座の一方のアレルだけに光を照射することが可能になり、ひいては、もう一方のアレルに対して影響を及ぼすことなく、一方のアレルだけに変異を誘導することに成功した。
- この手法は、顕性 (優性)変異のモデリングやホモ型変異が致死性のマウスモデル作出に利用可能である。
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