[出典] "DNA interference is controlled by R-loop length in a type I-F1 CRISPR-Cas system" Tuminauskaite D [..] Sinkunas T. BMC Biology 2020-06-15.
CRISPR-Casシステムの中で、タイプI CRISPR-Casの特徴はマルチサブユニット複合体のCascadeである。CascadeによるDNA分解過程はこれまでE. coli などが帯びているI−Eサブタイプを典型として、CascadeがDNAをスキャンし、PAM-プロトスペーサを認識し、標的鎖 (target sequence; TS)への結合とR-ループ形成を経て、Cas3によるDNA分解開始のモデルが確立されていた。
Vilnius Universityの研究グループは今回、E. coliをプラットフォームとする生化学的実験に基づき、Aggregatibacter actinomycetemcomitans D7S-1 (Aa)が帯びているタイプ I-F1 CRISPR-Casシステムの独特なDNA分解機構モデルを提唱した [Fig. 5引用改変右図参照]:
- As-Cascadeは、標準的な32 ntの長さのスペーサだけでなく、14-176 ntの範囲の長さのスペーサに結合し複合体(RNP)を形成する。
- 全てのRNPは、その上流にCまたはCTのPAMが隣接 (-1または-2,-1)しているプロトスペーサのTSに結合しR−ループの形成を誘導する。
- 長さそしてまたはミスマッチに左右されるスペーサとプロトスペーサの間の相補性によってR-ループの幅が決定する。
- R-ループの幅が32 bp以上であると、ATP依存で、ヌクレアーゼ/ヘリカーゼ (Cas2/3)によるDNA分解が進行する。
- R-ループが32 bpまで広がっていない場合は、DNA分解は進行しない。
Streptococcus thermophilus由来のタイプI-E CRISPR-CasサブシステムのCascade (StCascade) が15-47 ntの範囲のcrRNA (スペーサ)に結合して複合体 (RNP)を形成し、DNAをスキャンしR-ループを形成するに至るが、28-33 ntの領域がDNA分解には寄与しない現象をR-loop lockingとして報告 [* crisp_bio 2019-09-20]
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