2023-01-21 MIT Technology Review が、Verve ThrapeuticsのVERVE-101をCRISPR療法として"2023年の画期的技術10件"の一つとしてハイライトした。
[出典] "Next up for CRISPR: Gene editing for the masses?" Hamzelou J. MIT Technology Review. 2023-01-19. https://www.technologyreview.com/2023/01/19/1067074/next-for-crispr/
2022-11-05 非ヒト霊長類における試験結果
[出典] "Efficacy and Safety of an Investigational Single-course CRISPR Base Editing Therapy Targeting PCSK9 in Non-human Primate and Mouse Models" Lee RG, Nazzoka AM, Braun MC [..] Khera AV. Cirulation 2022-10-31. https://doi.org/10.1161/CIRCULATIONAHA.122.062132
 VERVE-101は、非ヒト霊長類 (カニクイザル)において忍容性が高く、血中PCSK9タンパク質を83%、LDL-Cを69%低下させ、投与後476日まで効果が持続した。これらの結果は、ヘテロ接合型家族性高コレステロール血症とアテローム性心血管系疾患を持つ患者を対象としたファーストインヒューマン臨床試験の開始を支持した。 
2022-07-13 Verve Therapeutics,ヘテロ接合性家族性高コレステロール血症の治療薬として,生体内塩基編集薬「VERVE-101」を初めてヒトに投与 [出典] News Release "Verve Therapeutics Doses First Human with an Investigational In Vivo Base Editing Medicine, VERVE-101, as a Potential Treatment for Heterozygous Familial Hypercholesterolemia" Verve Therapeutics. 2022-07-12 6:30 AM EDT. 
 Verve社は,アテローム性動脈硬化症の一種であるヘテロ接合型家族性高コレステロール血症患者を対象としてニュージーランドで開始したフェーズ1b臨床試験「heart-1」にて,最初の患者にVEWRVE-101を投与したと発表した.VERVE-101は,塩基エディターABEをベースとした遺伝子編集薬剤の単回投与によって,肝臓のPCSK9遺伝子を永久的に不活性化し,疾患の原因となる低密度リポタンパク質コレステロール (LDL-C)を減少させる治療法である.heart-1試験の安全性パラメータ,血中PCSK9値,血中LDL-C値などの中間臨床データは,2023年に発表される予定である [臨床試験登録番号 NCT05398029].
2022-05-21 5月10日付のVerve社のニュースリリース [*]を受けて,ブログ記事タイトルを「LDLコレステロールとトリグリセライドを抑制する 塩基エディター (ABE)をベースとするVERVE-101の開発進む」から「塩基エディター (ABE)による家族性高コレステロール血症治療薬VERVE-101の治験前進」へと改訂した.
[*] Verve社は,「2022年半ばにニュージーランドにて,ヘテロ型家族性高コレステロール血症 (HeFH)患者への投与を開始し,2023年中の初期臨床データを取得を見込み」,「2022年後半に向けて,英国と米国でのVERVE-101薬事申請を準備中」と発表した.
 また,ホモ型家族性高コレステロール血症 (HoFH)患者と従来の療法でLDL-C抑制を達成できなかったアテローム性動脈硬化症 (ASCVD)患者を対象とするANGPL3プログラムにおいて,非ヒト霊長類4例において,肝臓における ANGPTL3 遺伝子を標的とする塩基エディターによる療法が有効性を示し,肝毒性を伴わなかったことから,2022年の後半にIND (Investigational New Drug)試験開始を見込んでいるとした.

[出典] NEWS RELEASE "Verve Therapeutics Announces Clearance of First VERVE-101 Clinical Trial Application and Outlines Global Clinical Development Strategy; Reports First Quarter 2022 Financial Results"  Verve Therapeutics 2022-05-10

2021-09-24 Verve Therapeuticsが,TIDES USA (Oligonucleotide & Peptide Therapeutics Conference) にて,VERVE-101について36匹の非ヒト霊長類 (NHP)を用いた新しい前臨床試験およびパイロット試験のデータを報告した [crisp_bio注 本記事タイトルを"LDLコレステロールとトリグリセライドを抑制する 塩基エディター (ABE)をベースとするVERVE-101の開発進む"に改訂した].
[出典] PRESS RELEASE "Verve Therapeutics Reports New Preclinical Data with VERVE-101 Demonstrating Robust, Durable and Precise Editing of the PCSK9 Gene for the Treatment of Cardiovascular Disease" GlobeNewswire, Intrado. 2021-09-23 06:30 EST.
  • VERVE-101は塩基エディターのABEをベースとする製剤である.
  • 作用機序: PCSK9遺伝子の不活性化によるPCSK9タンパク質レベルの持続的低下 -> LDL受容体の発現亢進 -> 低比重リポタンパク質コレステロール (LDL-C)レベル低下 -> アテローム性動脈硬化性心血管疾患 (ASCVD)のリスク低減.
  • 今回の発表には,非ヒト霊長類 (NHP)を用いた長期にわたる有効性と安全性の試験,マウスの部分肝切除モデルを用いた試験,成熟した成体NHPを用いた生殖細胞編集評価,およびONE-seq と Digenome-seq を用いたオフターゲット編集評価が,含まれている.
  • パイロット試験から,PCSK9蛋白質および低密度リポ蛋白質コレステロールが15ヶ月間持続的に減少することを確認した.
  • 生殖細胞での編集は発生しないことを確認した.
  • ヒト肝細胞における244の潜在的な部位に,オフターゲット編集が発生しないことを確認した.
  • 2022年のIND (Investigational New Drug)申請に向けてVERVE-101の研究開発を継続する.
  • TIDES 2021での発表スライドが公開されている: "Safety and Durability of VERVE-101" Andrew Bellinger. TIDES 2021 September 23, 2021. 
2021-05-29 論文のハイライト記事へのリンクを追加: crisp_bio 2021-05-29 [ハイライト] ABEで高コレステロール血症を狙い撃ち - 非ヒト霊長類モデルで実証.https://crisp-bio.blog.jp/archives/26498356.html
2021-05-21 Nature 掲載論文の書誌情報とアブストラクト(訳),および他の塩基エディターを利用した同様の研究紹介crisp_bio記事へのリンクを以下に追記: "In vivo CRISPR base editing of PCSK9 durably lowers cholesterol in primates" Musunuru K, Chadwick AC [..] Kathiresan S. Nature. 2021-05-20. https://doi.org/10.1038/s41586-021-03534-y
 ヒトを対象とする遺伝子治療の臨床試験に進む前に,ヒト以外の霊長類にてヒトの治療標的と同じ臓器で,編集結果が維持され.安全であることを実証することが必須である.研究グループは,カニクイザル (Macaca fascicularis)の生体内へ脂質ナノ粒子を介してデリバリーしたABE8.8 [*]が,標的とした疾患関連遺伝子を効率的かつ正確に改変できることを実証した.
[*] Beam Therapeutics、ABE7.10をABE8へと進化.https://crisp-bio.blog.jp/archives/22292646.html
  • 脂質ナノ粒子の1回投与によって,肝臓内のPCSK9がほぼ完全にノックダウンされ.同時に,PCSK9の血中濃度が〜90%,低密度リポタンパク質 (LDL)コレステロールが~60%低下した.
  • 脂質ナノ粒子の1回投与の効果は,投与後少なくとも8ヶ月間安定していた.
  • 今回の成果は,LDLコレステロールの低下と世界的な死亡原因の第7位の動脈硬化性心疾患に対する'once-and-done'治療の可能性を示すと共に,ABE8.8によって肝臓などの臓器において治療標的遺伝子を1塩基の精度で修復する技術の可能性も示した
  • [crisp_bio注] 初稿で引用した記事と異なって,Methodが詳細に記述されていることは言うまでもないが,主たる成果については,カニクイザルが7頭から8頭に増え,おそらくそれに応じて効率を示す数字が若干変更されたに止まっているように見える.
 [crisp_bio関連記事]
  • 2021-05-19 塩基エディターからゲノムワイドとトランスクリプトームワイドのオフターゲット変異誘発を排除する.https://crisp-bio.blog.jp/archives/26362591.html -  (transformer BE (tBE)にて)PCK9タンパク質と血清中の総コレステロールの低減を実証
2020-06-28 初稿
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[出典] NEWS "I
n its first tough test, CRISPR base editing slashes cholesterol levels in monkeys" Begley S STAT 2020-06-27; ICCSR 2020講演者・Verve Therapeutics共同設立者Kiran Musunuruのツイート[文末に引用]

 ICCRS (国際幹細胞学会) 2020 Virtual Meetingの"Clinical Innovation & Gene Editing"プレナリーセッションにでVerve Theratpeuticsの共同設立者Kiran Musunuruが、カニクイザルにPCSK9ANGPTL3を標的する塩基エディター (ABE)を脂質ナノ粒子で送達した結果を報告した [Verve TheratpeuticsはABEをBeam Theratpeuticsからライセンスしていた]。
  • PCSK9を標的とした7頭:編集効率 67%; PCSK9レベル 89%減; LDLコレステロール 59%減
  • ANGPTL3を標的とした7頭: 編集効率 60%; ANGPTL3レベル 95%減; LDL コレステロール 19%減; トリグリセライド(TG/中性脂肪)レベル 64%減
  • カニクイザルとヒト培養肝細胞にはABE編集による異常はみられなかった (オフターゲット編集の配列レベルでの解析については言及されず)
先行研究
 2006年から2010年にかけて、PCSK9およびANGPTL3のナンセンス変異が、それぞれ、LDLコレステロールのレベルと冠動脈疾患のリスクの低減、および、トリグリセライドのレベルと心疾患のリスクを低減することが、報告されていた。
  1. PCSK9ナンセンス変異: "Sequence Variations in PCSK9, Low LDL, and Protection against Coronary Heart Disease" Cohen JC [..] Hobbs HH. N Engl J Med 2006-03-23. 
  2. ANGPTL3ナンセンス変異: "Exome Sequencing, ANGPTL3 Mutations, and Familial Combined Hypolipidemia" Musunuru K [..]  Kathiresan S. N Engl J Med 2010-12-02
  3. ANGPTL3とTGレベルおよびLDLレベルとの相関: "Biological, Clinical and Population Relevance of 95 Loci for Blood Lipids" Teslovich TM, Musunuru K [..] Kathiresan S. Nature 2010-08-05
研究の経緯 - Kiran Musunuruのツイートとcrisp_bio記事から