[出典] "Programmable m6A modification of cellular RNAs with a Cas13-directed methyltransferase" Wilson C, Chen PJ, Miao Z, Liu DR. Nat Biotechnol 2020-06-29.
2019年にShu-Bing Qian (Cornell U)のグループが、dCas9にRNAメチル化酵素またはRNA脱メチル化酵素を融合することで、部位特異的に作用する人工のm6A writerとm6A eraserを実現し、mRNA上の位置に依存するm6A修飾の生物学的作用を特定していくことが可能なことを示した [*1]。
[*1] CRISPRメモ_2019/08/12 [第2項] m6Aエディター: Cas9にRNAメチル化/脱メチル化酵素を融合することで、RNA修飾m6Aの'writer'/'eraser'を構築
D. R. Liuが率いる研究チームは今回、ssRNAに結合し切断する特徴を帯びたCas13 [*2]の不活性化版dCas13を利用することで、RNAを部位特異的にメチル化する'targeted RNA methylation (TRM)'システムを確立した [Figure 1 - b参照]。
[*1] CRISPRメモ_2019/08/12 [第2項] m6Aエディター: Cas9にRNAメチル化/脱メチル化酵素を融合することで、RNA修飾m6Aの'writer'/'eraser'を構築
D. R. Liuが率いる研究チームは今回、ssRNAに結合し切断する特徴を帯びたCas13 [*2]の不活性化版dCas13を利用することで、RNAを部位特異的にメチル化する'targeted RNA methylation (TRM)'システムを確立した [Figure 1 - b参照]。
[*2] Prevotella sp. P5–125 (PspCas13b Δ984–1090 H133A)
- RNAメチル化酵素のMETTL3 [*3] 単独とMETTL3–METTL14をin vitroで評価し、TRM開発に向けてdCas13に融合するRNAメチル化因子としてMETTL3を選択し、さらに、RNAへの非選択的結合親和性を弱めるためにRNA結合モチーフ(ジンクフィンガー: ZF)を除去したMETTL3ΔZF (以下、M3)をdCas13に融合するに至った。また、dCas13に、M3にMETTL14のMETTL3相互作用するドメイン (以下、M4)を結合した因子を融合したコンストラクトもテストした [Fig. 2参照]。
[*3] METTL3が、S-アデノシルメチオニン (SAM)からssRNAの配列モチーフDRACH (D = A/G/U; R = A/G; H = A/C/U)のアデニンにメチル基を転移する。 - E. coliに導入した合成転写物とE. coli内在mRNAについて、TRMの活性を確認した。オフターゲット・メチル化については、42,418候補サイトのうちdCas13-M3とdCas13-M3M4それぞれ179ヶ所と924ヶ所の結果となった。HEK293T細胞に外部から導入したレポーターRNAに対してもTRMは活性を示した。
- ヒト内在m6A readerは、細胞質にも核内にも存在することから、核外搬出シグナル (NES)または核局在化シグナル (NLS) を付加したdCas13–M3nesとdCas13–M3nlsおよびdCas13–M3M14nesとdCas13–M3M14nlsをHEK293T細胞においてテストした。
- β-actin (ACTB) mRNA 3'-UTR内のA1216を標的とするTRM (Cas13–M3nlsとdCas13–M3M14nes)によって、メチル化が野生型の2~5倍へと上昇することを見出した。GAPDHおよびFOXM1とSOX2のmRNAに対しても同様の効果が見られた。
- オフターゲットについてはdCas13–M3nlsがdCas13–M3M14nesに優り、また、dCas13–M3nlによるmRNAのレベルと選択的スプライシングを制御可能なことも実証された。
dCas9 m6Aエディターに対する優位性
- TRM、中でも、M3だけを融合するdCas13–M3nlsのオフターゲット・メチル化は、M3M14–dCas9に比べて有意に抑制されている。
- TRMは、M3M14-dCas9に必須であったPAMmerオリゴヌクレオチドを含む合成配列を導入する必要がなく、因子のデリバリーに有利である。
- TRMは核内でのRNAメチル化が可能である: 5'-UTRを標的可能であり、m6Aに依存する核内でのプロセッシング (選択的スプライシング、マイクロRNAの成熟、核外搬出およびクロマチンアクセシビリティー)の解析に利用可能である。
- 2019-11-21 CRISPR-Cas13によりRNAの生細胞内動態を可視化
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