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論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

[出典] "Single-cell lineage tracing by integrating CRISPR-Cas9 mutations with transcriptomic data" Zafar H, Lin C, Bar-Joseph Z. (bioRxiv 2019-05-07) Nat Commun 2020-06-16
[crisp_bio注] 本記事はbioRxiv版に準拠した「CRISPRメモ_2019/05/17-1 [第5項] LinTIMaT: CRISPR-Cas9バーコード編集とscRNA-seqの融合による細胞系譜追跡」の改訂版にあたる

 Carnegie Mellon Universityの研究チームは、CRISPR/Cas9がバーコード (DNA断片)にランダムに誘導するindels変異のパターンの変遷データに基づく細胞系譜の再構成した上で、scRNA-seqによる細胞型の同定とを組み合わせて細胞運命マップを描き出す手法について問題点 [*] を指摘し、Fig. 1最尤法に基づいて変異データとトランスクリプトームデータの双方に基づいて細胞系譜を再構成する統計的手法 "Lineage Tracing by Integrating Mutation and Transcriptomic data (LinTIMaT)"を開発したLinTIMaTの枠組についてFig. 1引用右図の a 参照]。
[*] LINNAEUS, ScarTrace, scGESTALT  [1]を引用し、ランダムな変異データだけに基づいて最大節約法 (MP)での細胞系譜を導出する手法の問題点を指摘

 LinTIMaT法を、細胞系譜が実験的に確定されているC. elegansのscRNA-seqにCRISPR-Cas9変異のシミュレーションデータ[2]を加えたモデルと、scGSETALTとScarTraceの実験で利用されたゼブラフィッシュのデータセットで検証し、変異データだけに依存した解析に見られる曖昧さを解消しMPに基づく細胞系譜再構成法に優ることを示した。
  • C. elegansモデルでの評価 [Fig. 2参照] 
  • scGESTALTデータセットでの評価 [Fig. 3参照] 
 Fig. 4また、LinTIMaTによって、同一生物種について実験を繰り返した結果得られる細胞系譜ツリーを統合して、いわば個体差を吸収した"species-invariant lineage tree"を再構成可能なこと [Fig.1引用上図の b およびFig. 4引用右図参照]、および、遺伝子オントロジー (GO)解析から見た機能の観点から、細胞クラスターが合理的であることが示された [Fig. 5参照]

[参考crisp_bio記事]
  1. 2018-04-12 細胞バーコーディングとscRNA-seqを一体化して、細胞型の同定と細胞系譜再構築の一石二鳥を実現 [第3項目]
  2. CRISPRメモ_2018/07/24 [第3項] CRISPRレコーダを利用して細胞系譜を精確に再構成することは可能か

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