[出典] "Regulation of Cas9 by viral proteins Tat and Rev for HIV-1 inactivation" Vergara-Mendoza M [..] Viveros-Rogel M. Antiviral Res 2020-06-21

 抗レトロウイルス併用療法 (combined antiretroviral therapy: cART)によってHIV-1の複製を制御し、疾患の進行を抑制し、不顕性感染に留めることが可能になった。次の目標は、不顕性感染の根源であるプロウイルスの除去である。
Salvador Zubirán National Institute of Health Sciences and NutritionUAM Iztapalapaなどのメキシコの研究グループは今回、HIV-1内在因子をCas9の発現制御に"活用"することで、正常な宿主細胞を損傷することなく、HIV-1感染細胞特異的にプロウイルスの複製を阻止可能なことを示した。
  • HIV-1から分離したLTR配列とINS-RRE配列を利用することで、HEK293細胞において、Cas9の発現調節が可能なことを確認した:
    LTR-[cas9-2A-GFP]-[INS-RRE]-LTR]のコンストラクトを構築し、LTR由来のTARへのTatタンパク質結合によるcas9転写、RREへのRevタンパク質結合を介したcas9 mRNAの核外移行、細胞質でのcas9翻訳を経て、核内移行したCas9がgRNAと結合し、tatrevを編集
  • Cas9に、HIV-1のtatrevを標的とする多重なgRNAsを組合せることで、HIV-1ゲノムの断片を効果的に削除し、ウイルス・カプシドタンパク質 (CA-p24)を除去し(非検出)、HIV-1の複製を効果的に抑止した。
  • TatとRevを介した自己制御装置が組み込まれたCas9-gRNAsは、Cas9の恒常的活性に由来するオフターゲット作用が抑制され、宿主細胞の正常な機能の損傷を回避可能である。