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[出典] High-performance CRISPR-Cas12a genome editing for combinatorial genetic screening. Gier RA, Budinich KA [..] Shi J. Nat Commun 2020-07-13

 CRISPR-Casをベースとしたスクリーニング法は、抗癌剤の標的探索を革新したが、標的遺伝子間の相乗作用を明らかにするに足る高信頼性の多重遺伝子編集は、未だ課題になっている。U Pennsylvaniaを主とする研究グループは今回、簡便で安定したCas12aをベースとするコビナトリアル遺伝子スクリーニング (combinatorial genetic screening: 以下, CGS)法を発表した。

 AsCas12aをベースとして、このCasタンパク質への変異導入とCRISPR RNA (crRNA)の改変を介して最適化したAsCas12aシステム (opAsCas12a)に至り、白血病細胞において、エピゲノム調節因子群の2因子を標的とするCGSにより、Brd9Jmjd6, Kat6aJmjd6, およびBrpf1とJmjd6の3セットの合成・病原性相互作用 (synthetic sick interactions*:以下, SSI) を同定した。
[*] ... If the combination of genetic events results in a non-lethal reduction in fitness, the interaction is called synthetic sickness. (Wikipedia "Synthetic lethality"から引用).

最適化AsCas12aをK562細胞で確認
  • AsCas12aはin vitroではSpCas9と同等の活性を示すことからヒト細胞内での活性向上の手段として核移行シグナルを見直し、crRNA (gRNA)の3'末端保護の観点からCRISPRアレイに見られる直列反復配列 (DR)を組み込み、さらに、AsCas12aのDNAへの結合親和性と活性の向上を目的とする変異 (E174RとS542R) を導入したAsCas12a*を作出した。Fig. 1
  • 6xNLS, デュアル-DR-crRNAおよびAsCas12a*がノックアウト効率を顕著に向上させることをK562細胞で確認し、これをopAsCas12aと称した [Fig. 1の一部引用右図参照]
 マウスAML細胞株 (RN2)における単一遺伝子ノックアウト (KO)検証
  • 一連の必須遺伝子とAML依存遺伝子の155ヶ所のタンパク質コーディング・ドメインを標的とするプール型KOスクリーンにより、opAsCas12aがSpCas9と同等の活性を示すことを確認した。
 opAsCas12aペアワイズスクリーンによりSSIを同定
  • 単一遺伝子KOスクリーンでは、2種類以上の遺伝子をノックアウトした場合に限り疾患や細胞死をもたら遺伝子の組合せを発見することができない。opAsCas12aではデュアル-crRNAカセット [DR-gRNA1-DR-gRNA2-DR]を用意することで簡便に2遺伝子同時標的が可能になり、また、SpCas9とデュアルsgRNAsによるCGSに対して、ガイドRNAとヌクレアーゼのアンカップリングが~30分の1まで (頻度 ~0.33%)抑制されることを確認した。Fig. 3-a
  • 単一遺伝子ノックアウト実験においてRN2細胞の増殖への影響が無いか中程度であったエピゲノム調節因子のドメイン21種類を標的とする63 crRNAs (ドメインあたり3 crRNAs)に、ネガティブコントロール用22 crRNAsとポジティブコントロール用6 cRNAsを加え、8,281種類のペアワイズコンビネーションによるスクリーンを行った [Fig.3-a引用右図参照]。
  • Fig. 3-b実験に使用したcrRNAsの75%が、デュアル-crRNAカセットの前方に配置されたときに大きな影響を示したことから、この配置によるバイアスを統計的に排除した上で、増殖阻害効果が単独KOの効果からの期待値よりも高い [Fig 3-b引用右図の赤丸]ペアが相乗効果をもたらしたと判定した。
  • その結果、SSIとしてBrd9/Jmjd6, Kat6a/Jmjd6, およびBrpf1/Jmjd6の3ペアを同定するに至った。
  • Jmjd6の単独ノックアウトは細胞増殖に殆ど影響を及ぼさないが、3ペアに共通していることから、Jmjd6はRN2細胞の各種ストレスに対する感受性を高めることが示唆された。
  • BRD9, JMJD6およびKATA6Aの機能はそれぞれヌクレオソームのリモデリング、タンパク質水酸化およびヒストン脱メチル化であり、これらの機能から3遺伝子の相乗作用はにわかには予測できない。
  • Brd9/Jmjd6Kat6a/Jmjd6のペアワイズ・ノックアウトがRN2細胞とB16-F10メラノーマ細胞の増殖を阻害した一方で、NIH3T3細胞とB16-F10への影響は最小限であった。また、opAsCas12aペアワイズスクリーンの結果は薬理的阻害実験や遺伝子発現プロファイルなどからも、opAsCas12aを介したスクリーンから推定したSSIが癌細胞に特異的なSSIであることが裏付けられた。
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