[出典] Codelivery of CRISPR-Cas9 and chlorin e6 for spatially controlled tumor-specific gene editing with synergistic drug effects. Deng S, Li X [..] Leong KW, Cheng D. Sci Adv 2020-07-15.
中山大学, 南洋理工大学およびコロンビア大学の研究グループは今回、CRISPR-Cas9 RNPと腫瘍親和性が高くかつ近赤外光 (NIR)に対する感受性を帯びている物質クロリンe6 (Ce6)を、ナノ粒子で同時にデリバリーすることで、NIR照射によって、モデルマウスにおいて腫瘍細胞特異的に83%を細胞死へと誘導することを実証し、腫瘍の光線力学療法 (photodynamic therapy: PDT)の可能性を示した。
- ニトリロ三酢酸を利用することでCe6を内包するアニオン性ミセルが自己組織化し、Hisタグを付したCas9/sgRNA RNPが結合する。これを、カチオン性ペプチドiRGDで被覆しナノ粒子に至る [Fig. 1引用右図の上段 参照]。
- ナノ粒子は、インテグリン-iRGDを介して腫瘍細胞に結合し、内在化する [右図の細胞模式図の右上参照]。
- NIR照射によって、Ce6が活性酸素種 (ROS)を生成し、ナノ粒子はリソソームから解放されて細胞質へと移動し、S-S結合の低減を介してCas9/sgRNAを放出する。Cas9/sgRNAは、抗酸化遺伝子Nrf2を標的と設計されており、腫瘍細胞のCe6由来ROSに対する感受性を高める。一方で、NIR照射を受けなかった正常細胞では、Cas9がリソソームにより分解され、Nrf2遺伝子編集が進行せず、このナノ粒子で損傷されることがない [この機序について、Fig. 6引用右図参照]。
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