2024-01-17 更新 プロトコル論文の書誌情報などを追記
CRISPR関連トランスポザーゼ (CAST) による細菌ゲノム工学
[出典] "Bacterial genome engineering using CRISPR-associated transposases" Gelsinger DR, Vo PLH, Klompe SE, Ronda C, Wang HH, Sternberg SH. Nat Protoc 2024-01-12. https://doi.org/10.1038/s41596-023-00927-3 [著者所属] Columbia U, Vertex Pharmaceuticals Inc, Institut Pasteur, UC Berkeley

 CASTは容易にプログラム可能でありながら、大きな遺伝子を高い精度で組み込むことができるため、キロベース規模のゲノム工学の技術的展望を一変させる可能性を秘めている。CASTのトランスポゾンは、効率的なCRISPR RNA (crRNA) でガイドされるトランスポザーゼをコードしており、大腸菌のゲノム挿入を〜100%に近い効率で実現する。さらに、このトランスポザーゼは、複数のcrRNAsでプログラムすることで多重編集を実現し、多様なグラム陰性細菌種で強固に機能する。

 ここでは、CASTシステムを用いた細菌ゲノム工学のための詳細なプロトコルを紹介する。これには、利用可能なベクターのガイドライン、ガイドRNAやDNAペイロードのカスタマイズ、一般的な送達方法の選択、CASTでの編集結果の遺伝子型解析などが含まれる。さらに、潜在的なオフターゲットを回避するためのcrRNA設計アルゴリズムと、多重DNA挿入を行うためのCRISPRアレイのクローニングパイプラインについても述べる。ここで紹介するプロトコルに基づくことで、入手可能なプラスミド・コンストラクトと標準的な分子生物学的技術を用いて、1~2週間以内に目的の新規ゲノム統合イベントを含むクローン株を単離することができる。

[図表一覧]
2020-11-24 更新 Nature Biotechnology論文書誌事項とリンクを追加: "CRISPR RNA-guided integrases for high-efficiency, multiplexed bacterial genome engineering" Vo PLH [..] Sternberg SH. Nat Biotechnol. 2020-11-23. https://doi.org/10.1038/s41587-020-00745-y
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2020-07-21 初稿
[出典] "CRISPR RNA-guided integrases for high-efficiency and multiplexed bacterial genome engineering" Vo PLH [..] Sternberg SH. bioRxiv 2020-07-18.

 コロンビア大学のS. H. Sternbergの研究チームは先行論文 [1]で、Tn7トランスポゾンに、タイプI-F CRISPR-Casシステムの一部が入り込んだVibrio cholerae由来のTn7様トランスポゾン (Tn6677トランスポゾン)を報告し (先行論文Extended Data Fig. 1 - f 参照)、また、続いて、その構造基盤 [2]も明らかにしていた。研究チームは今回、Tn6677トランスポゾンの実用化を促進する INTEGRATE (insertion of transposable elements by guide RNA-assisted targeting) を開発した。
  • Tn6677トランスポゾンに拠るドナーDNAの組込みでは、多重な発現ベクターが必要であり、大規模なDNA断片の組み込み効率が低いことが、課題であった。
  • 先行研究の手法をスリム化したINTEGRATEは~100%の効率、10 kbpまでの長さのDNA断片の挿入、および、多重並列 (3ヶ所の遺伝子座)の編集を実現した。
  • 多重並列挿入は多重なcrRNAからなるCRISPRアレイを介して実現し、また、INTEGRATEにCre-Loxを組合せることで多重並列削除も実現した。
  • INTEGRATEは、 Escheria coliに加えて、Klebsiella oxytocaPseudomonas putidaでも機能することを確認した。
  • 加えて、gRNAの設計アルゴリズムも開発した。
 [参考論文および関連crisp_bio記事]
  1. "Transposon-encoded CRISPR–Cas systems direct RNA-guided DNA integration" Klompe SE, PLH Vo, Halpin-Healy TS, Sternberg SH. Nature 2019-06-12.
  2. 2019-07-19 トランスポゾンとCRISPR-Casシステムの協働によるDNAターゲッティングの構造基盤; "Structural basis of DNA targeting by a transposon-encoded CRISPR-Cas system" Halpin-Healy T, Klompe S, Sternberg S, Fernández I. Nature 2019-12-18.
  3. [20200628更新] Cas12kとトランスポザーゼの協働により、Cas9と異なりDSBを介さずに、ドナーDNAの効率的挿入を実現
  4. 2020-06-27 [特許公開] CRISPRシステムのコンポーネントとトランポザーゼのエレメントの協働による遺伝子編集法とその応用
  5. 2019-06-21 トランスポザーゼをdCas9-sgRNAで誘導し、4.5 kbを大腸菌lacZαにターゲッティング
  6. 2019-06-13 短縮型I-F CRISPR-Casを帯びたトランスポゾンにより、DSBを介さず大腸菌ゲノム標的サイトにDNAをノックイン