[出典] Generation of a Hutchinson–Gilford progeria syndrome monkey model by base editing. Wang F [..] Ji W, Liu GH, Long C, Niu Y. Protein Cell 2020-07-29

背景
  • 早老症の一種ハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候群 (Hutchinson- Gilford progeria syndrome: HGPS)のほぼ90%は、核膜タンパク質ラミナA (LMNA)のエクソン11内の点突然変異 (1824 C>T, Gly608Gly)によってもたらされる非遺伝病である。
  • この点変異を帯びたLMNAは、スプライシング異常を介して150-ntを欠損したmRNAへと転写され、続いて、ZMPSTE24 切断サイトを欠損した短縮タンパク質 (プロジェリン)へと翻訳される。プロジェリンからはファルネシル化されたテールが除去されず蓄積し、早老症の病態をもたらす。
  • HGPSのモデルとして、動物 (マウス, ウサギおよびブタ)モデル、HGPS患者由来iPSCsから分化した細胞モデルが開発され、研究に貢献してきた。しかし、その結果をヒトへと展開するには霊長類モデルでの研究が重要である。
成果

 昆明理工大学を主とする研究グループは今回、BE4max [*]を利用して、LMNA(1824 C>T, Gly608Gly)変異を帯びたカニクイザルMacaca fascicularisを作出し、HGPS霊長類モデルとして有用なことを示した。
  • 2020-08-02 10.34.0186個のサル受精卵にBE4max mRNAとsgRNAをマイクロインジェクションし、形態が正常な41個の受精卵を、11頭の代理母へ移植し、6頭が妊娠し、5頭から新生仔を得た (Figure 1-A,Eを引用した右図参照: 5頭は右図 Eの中の、#1, 2, 3, 5および6; #4は帝王切開前に死亡)。
  • 7種類の臓器に設計通りのC-to-T変換が誘導され、また、野生型 (WT)とHGPSの間で、点突然変異 (SNVs)のプロファイルに有意差は無いことを、同定した。
  • プロジェリンに相当するmRNAの存在をqRT-PCRで判定した結果、ホモ型変異の#4と#5、及びヘテロ型変異の#1の各臓器での高発現が見られたが、変換効率が低かった#2と#3では見られなかった。ウエスタンブロットと免疫蛍光法でも整合する結果を得た。
  • BE4max編集サルは、幼児から成長するにつれて症状が顕れる点や、脳でのプロジェリンが見られないことも含めて、HGPS患者の病態を再現した。
参考crisp_bio記事