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論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

[出典] Mutation-Independent Allele-Specific Editing by CRISPR-Cas9, a Novel Approach to Treat Autosomal Dominant Disease. Christie KA [..] Moore CBT. Mor Ther 2020-05-08.

 常染色体顕性疾患の治療法候補として、CRISPR-Cas9技術によって病原性変異アレルを帯びた遺伝子をdsDNA切断のNHEJ修復を介して破壊する手法が登場した。この手法は、野生型と変異型の間の一塩基の違いを識別可能であることを前提としており、これまでに、gRNAの一塩基変異検知に依存する方法と、一塩基変異に伴い野生型ゲノムと異なる位置に生成されるPAMに依存する方法の2種類が工夫されてきた。しかしこの手法を、ミスセンス変異を多数伴うTGFBI 角膜ジストロフィー*のような疾患に展開することは困難である (* TGFBI角膜ジストロフィーには70種類以上のミスセンス変異が知られている)。

 Ulster Universityを主とする研究グループは今回、病因変異を帯びたアレルにおいて一連の病因変異に対してcisに位置し、かつ、近位にPAMが存在しもう一方のアレルにはNGG PAMが存在しない自然突然変異 (SNPs)を標的とすることで、個々の病因変異に依存することなく、病因アレルを選択的に除去可能とする手法を開発し、TGFBI 角膜ジストロフィー遺伝子編集をモデルとして実証した。

 この手法は、患病因変異の如何にかからず、患者固有の遺伝子構造から標的可能な自然突然変異を同定することで、個別化遺伝子治療を実現する可能性も拡げた。
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