2020-08-07 初稿; 2020-08-10 Nature2020-06-30論文の情報を追加

[出典] Clinical Course and Molecular Viral Shedding Among Asymptomatic and Symptomatic Patients With SARS-CoV-2 Infection in a Community Treatment Center in the Republic of KoreaSeungjae Lee, Tark Kim, Eunjung Lee et al. JAMA Intern Med 2020-08-06

 スンチュンヒャン大学病院のEunjung Leeが率いる韓国の研究グループは、2020年3月6日から26日の間、天安市に臨時に設けた治療センター[*] に収容したSARS-CoV-2に感染している110名の無症状者と193名の有症状者 ('mild'な症状が顕れている患者)の症状とウイルス量を比較し、無症状患者の鼻、喉および肺に見られるウイルス量 (RT-PCRのCt値)が、有症状者と同レベルであることを見出した。
[*] 医師 8名, 看護士 12名および看護助手 8名のスタッフで: Out-of-hospital cohort treatment of coronavirus disease 2019 patients with mild symptoms in Korea: an experience from a single community treatment center. Park  PG, Kim  CH, Heo  Y, Kim  TS, Park  CW, Kim  CH. J Korean Med Sci. 2020;35(13):e140.
  • 対象者の年齢は22-36歳 (中央値 25歳)、併存疾患を帯びていたのは12名 (10名 高血圧, 1名 癌, 1名 喘息)と、比較的若くて健康なコホートである。
  • ウイルス量は、鼻咽頭と中咽頭のスワブと喀痰からを検体とするRT-PCR検査により、収容から8, 9, 15, 16日目に判定した。また、医師の判断で、10, 17, 18, 19目にもRT−PCR検査を行った。
  • 収容時に無症状であった110名の感染者のうち~19% (21名)は、収容から13-20日 (平均15日)で症状が顕れた (著者らは、これをpre-symptomaticと呼び、asympotomaticと区別した)。したがって、症状が有ることを前提としたサーベイランスは、pre-symptomaticな感染者を捉えることができない。
  • 3月13-15日のRT-PCR検査結果に基づいて、3月15-16日に、無症状者と有症状者のグループからそれぞれ26名と58名が収容を解かれた。
  • pre-symptomaticを除く無症状者は~17日でウイルスが陰性化し、pre-symptomaticを含む有症状者は19-20日でウイルスが陰性化した (注: 上気道からのRdRp遺伝子のレベルの減り方が有症状者の方がゆっくりとしていた一方で、下気道からのenv遺伝子のレベルの減り方は無症状者の方がゆっくりとしていた)。
  • 感染者に占める無症状者の比率は、例えば、韓国内の長期療養施設, ダイアモンド・プリンセス号 (推定値), アイスランドからそれぞれ56.5%, 17.9%, および、43%という数字が出ているが、今回の調査と異なり、陰性になるまで無症状を維持した真の無症状感染者 (asympotomatic)と発症前感染者 (pre-symptomatic)が混在している
[crisp_bio注] ウイルスの伝播は、個人が帯びているウイルス量に加えて各々の生活様式と環境にも依存すると思われるが、無症状者が有症状者と同レベルのウイルスを排出する可能性を帯びていることが示唆された。

2020-08-10追記

[出典] Suppression of a SARS-CoV-2 outbreak in the Italian municipality of Vo’. Lavezzo E, Franchin E [..] Crisanti A. Nature 2020-06-30.
  • イタリアで初めてCOVID-10の死者が出たパドヴァ県 (Padua)の小規模 (~3,000人規模)な町(コムンーネ/基礎自治体)のヴォー (Vo)は、14日間ロックダウンの措置をとった。
  • ロックダウンの初期と終了時期の2回それぞれ2,812人 と2,343人の鼻咽頭スワブのRT-PCR検査を行い、臨床症状や背景情報と照合した。
  • 検査の間隔は平均7.2日であった。
  • 感染率は第1回と第2回で、それぞれ、2.6% (95%信頼区間(CI): 2.1-3.3%)と感染率 1.2% (95% CI: 0.8–1.8%)であった。
  • 感染者の42.5%が、第1回から第2回まで無症状であった。
  • 無症状者と有症状者の間に、ウイルス量に有意差が無かった (P値: E遺伝子とRdPp遺伝子それぞれ0.62と0.74)