[出典] In vitro Cas9-assisted editing of modular polyketide synthase genes to produce desired natural product derivatives. 工藤慧, 橋本拓哉 [..] 池田治生, 新家一男. Nat Commun 2020-08-11.
創薬において、抗体のような高分子と低分子化合物のギャップを埋める中分子が注目を集めている 。中分子創薬に向けては機能性人口ペプチドのde novo設計も提案 [1]されているが、天然物に由来するマクロライド のような分子の生合成経路の改変が有力な手段である。
新家一男 (産総研), 池田治生 (北里大学)らの研究グループは今回、in vitro CRISPR-Cas9ゲノム編集とギブソン・アセンブリを組合せることで狙った生合成遺伝子クラスタを構築し、先行研究で実現していた200 kbを超える生合成遺伝子クラスタを異種発現する技術 [2] に繋げることで、天然物化合物から有用な中分子を誘導する (derivatization)プラットフォームを確立した。
モジュール型のI型ポリケタイド合成酵素 (PKS)クラスター での概念実証実験
PKSを構成する一連のモジュールは、単一のPKSモジュールの重複から進化してきたとされ、互いの相同性が高い。研究グループは、中でも相同性が高いラパマイシンPKSをモデルとして、一連のモジュールごとの精密な編集を実現した [プラットフォームの流れについてFig. 1引用右図 a 参照]
プラットフォームの汎用性
- ラパマイシン以外のPKS化合物であるピクロマイシとロイコマイシン (キタサマイシン), および, 非リボソームペプチド (YM-254890)の編集も実現 (crisp_bio注: データは論文内には提示されていない)。
天然物は今でも創薬に一定の地位を占めている [3] が、近年、新奇化合物の発見頻度の低下もあって、天然物由来の中間体の誘導体化 (derivatization)が大きな課題となっていた。このプラットフォームはその解を提示した。
[参考記事と論文]
- 2017-05-02 中分子創薬:極めて安定な機能性人工ペプチドde novo 設計と作出
- Natural Products as Sources of New Drugs over the Nearly Four Decades from 01/1981 to 09/2019. Newman D, Cragg GM. J Nat Prod 2020-03-12.
- Biosynthesis of Quinolidomicin, the Largest Known Macrolide of Terrestrial Origin: Identification and Heterologous Expression of a Biosynthetic Gene Cluster over 200 kb. Hashimoto T [..] Shin-Ya K. Org Lett 2018-12-13.
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