[出典] Extracellular Vesicle and Particle Biomarkers Define Multiple Human Cancers. Hoshino A, Kim HS, Bojmar L, Gyan KE [..] Jarnagin WR, Lyden D. Cell 2020-08-20. https://doi.org/10.1016/j.cell.2020.07.009

  Weill Cornell Medicine/東工大の星野歩子とDavid LydenならびにMSKCCのWilliam R. Jarnaginをリーダとする米, 日,  韓, スエーデン, スイス, 伊, スペイン, ポルトガルならびにイスラエルの研究機関による多施設国際共同研究の成果がCell誌に掲載された。

 細胞から放出される小胞については研究者によって様々な呼称が使われていたところ、David Lyden等は2018年にNature Cell Biology誌にて、細胞外小胞をsmall exosomes (Exo-S), large exosomes (Exo-L), およびexomeres (エクソソーム)に分類することを提案したが [*]、今回、これらをExtracellular Vesicle and Particle (EVPs)と総称した。
[*] crisp_bio 2018-02-26 腫瘍細胞から分泌される新たなナノ粒子'exomeres'

 細胞から末梢循環へ放出されるEPVsは109 小胞/mLの濃度に達するとされ、バイオプシーと異なり非侵襲的リキッドバイオプシーを実現する資源として、癌の早期診断、予後および治療戦略の立案への貢献が期待され、EVPが内包するタンパク質, RNAなどの分子を対象とするデータベース (Vesiclepedia, EVpediaExoCarta)も公開されている。

 研究グループは今回、これまで明確にされてこなかった (1) 由来する組織に依存しないヒトEVPsを識別するマーカー、(2) 腫瘍由来と正常由来を識別するマーカー、および、(3) 原発組織に特異的なマーカーを明確にすることを目指して、癌患者と健常人を判別可能とするEVP内包タンパク質のプロファイルの同定を試みた。
  • ヒトとマウスの細胞株、組織、血漿その他体液に由来する腫瘍関連を含む497検体からEVPsを分離し、ヒト由来の426検体 (274腫瘍サンプル; 152健常サンプル)のプロテオームを質量分析で解析した。
  • ヒトの細胞, 組織および血漿を含む体液から分離したEVPsの最も有力なマーカーとして、従来知られていたエクソソームのマーカーの中から、ヒートショックタンパク質のHSPA8とHSP90AB1, CD9, ALIX (PDCD6IP)を同定した。加えて、ヒト検体由来EVPsの半数以上に共通な13種類の新たなタンパク質 (ACTB, MSN, RAP1Bなど)を同定した。
  • 膵臓癌患者と肺癌患者の腫瘍組織と、隣接または遠位の非腫瘍組織のバイオプシー検体由来EVPプロテオームの比較から、腫瘍特異的かつ双方の腫瘍に共通なタンパク質11種類を同定し、同時に、それぞれの腫瘍に特異的なタンパク質と、GSEAとGO解析を介して、それが関与するパスウエイを同定した。例えば、EMT関連は膵臓癌に特異的であり、RNAプロセッシング関連は肺癌に特異的であった。
  • また、組織外植片 (以下、TE)sと血漿に由来するEVPsのプロテオームの比較から、癌患者の血漿において腫瘍に特異的なEVPタンパク質を同定し、それらが、腫瘍微小環境、遠隔器官および免疫システムに由来することを明らかにした。
  • ステージI-IVの癌患者の組織EVPと血漿EVPのプロテオームと、正常組織と健常者の血漿EVPプロテオームと比較し、遠隔組織へ転位する前に腫瘍関連EVPタンパク質を捉えることが可能なことを同定した。また、EVPプロテオームを機械学習 (ランダムフォレスト法)により分類し、癌 (腫瘍型)を、組織EVPプロテオームにより特異度90%・感度94%で、血漿EVPプロテオームにより、特異度95%・感度90%で、判定可能なことを示した。
  • 癌の原発組織が不明な腫瘍を分類可能とするTEsと血漿における腫瘍型に特異的なEVPタンパク質のパネルを定義した