(創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 2016/01/07)CRISPR関連文献メモ_2016/01/07

  • 責任著者 J. Keith Joung(Massachusetts General Hospital)
  • Feng Zhangらの研究チームが2015年12月に、Cas9/sgRBA/標的DNA三者複合体の構造に基づいて、Cas9とターゲットではないDNA鎖との結合を弱めてオフターゲット編集を低減するという発想にもとに、オフターゲット編集を検出限界以下に抑制可能なeSpCas9を作出した(Science 誌 オンライン版).本論文は、その時点でレビューを受けていた論文.
  • J. Keith Joungらは結果的に、Feng Zhangらと同様な仮説から出発していたが異なるSpCas9変異体に辿り着いた。SpCas9とDNAの間の直接水素結合に関与しているSpCas9の4カ所の残基(N497, R661, Q695, Q926)を1〜4カ所アラニンに置換した変異体15種類について、オンターゲットとオフターゲットの編集効率をEGFP 切断アッセイによって評価した.
  • 野生型に匹敵するオンターゲット編集効率を示し、オフターゲット編集が最も低かった4カ所いずれもアラニンに置換した変異体を、SpCas9-HF1(SpCas9 high-fidelity variant number 1)と命名し、GUIDE-seqとターゲット・ディープ・シーケンシングによってその選択性を詳細に分析した.内在遺伝子を標的とする8種類のsgRNAによる実験の結果、野生型Cas9が7種類についてオフターゲット編集を起こしたのに対して、SpCas9-HF1が起こしたオフターゲット編集は1種類に留まった.
  • SpCas9-HF1に加えて他の変異を誘導したSpCas9-HF2, -HF3および-HF4も作出・評価した。
  • 現時点で、GUIDE-seqは最も高感度なオフターゲット編集検出システムであるが、オフターゲット編集が存在しないことを証明するまでには至らない.膨大な数の細胞が対象となる臨床へCRISPR/Cas9を応用するには、さらなるCas9の改変(例 Feng Zhangらが見出した変異導入との融合)の工夫とともに、高感度なオフターゲット編集検出システムの開発も必要である.
  • 本論文をとりあげたNature Newsは文末の段落で、ゲノム編集の安全性に対するFDAの姿勢について、ZFNによる遺伝子編集の治験を80名以上行なって来たSangamo BioSciencesのFyodor Urnovの経験とコメントを紹介している:"FDAからは、オフターゲットのデータとともに、改変したT細胞が正常なT細胞と同様に振るまうこと、および、ゲノム編集した肝臓細胞が細胞毒性を示すことなく機能し続けていること、などのデータを求められた";"J. Keith Joung等の成果はCas9分野における確固たる前進であるが、臨床に適用可能になるまでは長い道のりが続くことを知っている."