2021-07-02 TOKYO2020へのウガンダからの選手団に,日本到着時に新型コロナウイルス陽性者1名が見つかったが,合宿地に移動後,もう1名陽性者が見つかった.その後,ウガンダ選手団と同じ飛行機便で帰国した日本人1名が陽性であることが判明した [*].感染経路はまだ特定されていない.いずれにしても,入国時の審査の際に,選手団と一般客の通路を分けたことを,水際対策として報道されていたが,それだけでは不十分なように思う.
[*] TOKYO Web 3031-07-01 18-24. https://www.tokyo-np.co.jp/article/113990
2020-11-22 ブログ記事タイトルを「フライトの長さによらず機内クラスター発生3例 (いずれも2020年3月に発生)」から「旅客機内クラスターの発生事例 - 搭乗前陰性判定の乗客からの事例」に改訂し、3例を追加
事例6 ドバイからニュージーランド18時間のフライト (9月の事例) - 搭乗に先立つ検査陰性の乗客1名が乗客4名へ感染
[出典] "A traveler tested negative for covid-19 before a flight. He had the virus and infected 4 passengers" McMahon S. The Washington Post. 2020-11-20. [ニュージーランド当局の発表に準拠した記事]

 入国者に14日間の検疫期間を設定しているニュージーランド政府は11月20日 (金)に、「ドバイからの搭乗者数86名のうち7名が新型コロナウイルスに感染し、そのうち、5名は搭乗前48時間内でのウイルス検査で陰性の判定であり、そのうちの1名 (以下, index case)から少なくとも4名に感染が広がった。また、index caseは搭乗前に無症状 (pre-symptomatic/発症前無症状)であった」と発表した。なお、感染者は互いに4列以内に着席していた。

 この発表は、症状の進行状況、旅程、およびゲノム解析を総合的に判断した結果に基づいており、報告資料には「Index caseが感染していたウイルスのゲノム配列は、index caseの出発地スイスで検出されていたゲノム配列と近縁」とある。また、自己申告では7名のうち5名は機内でマスクと手袋を着用していた。

 この事例は、ニュージーランドが到着客全員を14日間の検疫期間中にモニターしウイルス検査もするプロトコルを実施していたからこそ把握できた事例である。

事例5 ボストンから香港への便・ 3月の事例 (フライト > 15時間)
[出典] "In-Flight Transmission of SARS-CoV-2" Choi EM, Chu DKW, Cheng PKC, Tsang DNC,
Peiris M, Bausch DG, Poon LLM, Watson-Jones D. Emerg Infect Dis. 2020-09-18.

  搭乗者数 294名; 乗客2名と搭乗員2名のクラスター; 入国後の検査で陽性判定; 4名に由来するウイルスのゲノム配列は100%一致し、また、それまでに香港で検出されたウイルスとは別系統でトロント/NYC/マサチュセッツで分離されたウイルスの近縁であったこと搭乗前の訪問地などから、乗客2名がボストンから搭乗時に感染しており搭乗員2名に広がったと推定

事例4 同一フライトの乗客からアイルランド国内に感染が広がった事例 (フライトは~7.5時間)
[出典] "A large national outbreak of COVID-19 linked to air travel, Ireland, summer 2020" Murphy N et al. Euro Surveill 2020-10-22.

 異なる3つの大陸からヨーロッパの空港で乗り継いで同一フライトでアイルランドに到着したフライトの搭乗者13名から、アイルランド各地での49名の感染者へと広がった2020年夏の事例 [Figure 3引用左下図]; 座席表に感染者などをマップしたFigure 2引用右図のグループ1とグループ2は機内感染と推定
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2020-10-27 更新: 比較的短時間のフライトでの機内クラスター発生2例を追記; タイトルを「 長距離フライトでの機内クラスター発生例 (2020年3月)」から「フライトの長さによらず機内クラスター発生3例 (いずれも2020年3月に発生)」へと変更
[crisp_bio注] 事例3はスプレッダーと見られる乗客がマスクを装着しておらず, 事例2と初稿の例もマスク装着が推奨されていなかった時期でおそらくマスクを装着していなかったされている。機内での換気速度・容量は十分と言われているが、マウス装着必須と思われる。長距離フライトでの飲食も控えたいところだが .....。

事例3 神戸空港から沖縄空港 (3月20日; ~2時間のフライト)
[出典] 国立感染症研究所Webサイト 2020-10-23 "航空機内での感染が疑われた新型ウイルス感染症
 (COVID-19)のクラスター事例" IASR Vol. 41 p187-188: 2020年10月号
  • 乗客1名 (#1)が23日に帰宅後26日に発熱し28日にPCR陽性判定 (機内では激しく咳をし, マスクをしていなかった)。
  • 周囲の座席から全員まで順次拡大検査(以下, 連絡がとれた乗員乗客についての結果): 左右2列3名のうち2名; 前3列, 後1列, 左右2列10名のうち3名; 左右および後列3列9名のうち2名; 乗員乗客者全員 (141名)122名のうち14名陽性
  • 疫学調査に加えて、#1を含む13例のゲノム配列データを得て比較解析の結果、同一または1塩基変異のみであったため、機内で感染が広がった可能性が高いとした。
  • 座席表はこちら (@AirborneKanki ツイートへのリンク)
事例2 テルアビブ空港からフランクフルト空港 (3月9日; 4時間40分のフライト; ボーイング 737-900)
[出典] "Assessment of SARS-CoV-2 Transmission on an International Flight and Among a Tourist Group" Hoehl S, Karaca O, Kohmer N et al. JAMA Netw Open 2020-08-18. (PMC7435338)
  • フランクフルト到着時に乗客乗員 102名のうちツアー客24名陽性
  • 座席表 Figure 1参照
  • 7名に症状, 2名後に発症 (presymptomatic), 1名 無症状を維持
  • ツアー客は搭乗7日前に、後に感染が確認されたホテルマネージャーと接触した機会があったが、著者らは感染者のうち2名が機内感染と判定
2020-09-20 初稿
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事例1
[出典] Transmission of severe acute respiratory syndrome coronavirus 2 during long flight. Khanh NC, Thai PQ [..] Vogt F, Anh DD. Emerg Infect Dis. 2020-09-18. (Early Release). 

 National Institute of Hygiene and Epidemiology (ハノイ)にAustralian National Uが加わったグループが、ロンドン現地時間2020年3月1日午前11:20発, ハノイ現地時間2日午前5:30着のベトナム航空54便 (VN54; ボーイング787-9)でのクラスター発生例を、米国CDCが発行する感染症雑誌に発表した [感染者がマップされた機内座席表Figure 1参照]。
  • 搭乗者数は、乗務員16名と乗客201名であった。
  • 座席占有状況は、ビジネス 21名/28席, プレミアムエコノミー 35名/35席, エコノミー 145名/217席であった。
  • ビジネスクラスの乗務員とサービスおよびトイレは他のクラスと区分けされていた。
  • 2月初旬からロンドンに滞在していたベトナム人ビジネスウーマン (27歳)をインデックス・ケース (以下, case 1)と推定した。
Case 1の状況
  • 2月18日 姉妹でイタリア訪問
  • 2月20日 ロンドンに戻る
  • 2月22日 ミラノ - パリ (ファッションウィーク) 
  • 2月25日 ロンドンに戻る
  • 2月29日 (喉の痛みと咳)
  • 3月 1日 VN54ビジネスクラスに搭乗 (喉の痛みと咳続く) 
  • 帰国後は家族を除いて自己隔離; COVID-19の症状 (喉の痛みと咳に発熱, だるさ, 息切れ) 
  • 3月 5日 病院にて受診・RT-PCR検査
  • 3月 6日 SARS-CoV-2感染判定
  • 3月 7日 家族, 陽性判定
  • 3月10日 2月29日に会ったロンドンの友人陽性判定 (姉妹も陽性判定)
疫学調査
  • 3月10日までに、ベトナム国内に居た乗務員16名全員と乗客168名 (84%)を隔離し、PCR検査し、搭乗前および帰国後の動向や健康状態などについてインタビューした。乗客33名はベトナム国外へと移動済みで追跡不可能であった。
  • 乗客14名と乗務員1名が陽性判定となりcase 1を含めて16名感染と判定した。 
  • 感染者の背景: 年齢 30 - 74歳 (中央値 63.5歳); 男/女 9/7名; 英国籍 12名
  • 感染状況: ビジネスクラス - case1に加えて12名; エコノミークラス - 乗客 2名と担当乗務員 1名; ビジネスクラスでは、case1から2 m以内の席11名 (92%)が感染し、2 m以上離れた席の乗客のうち1名 (13%)が感染。
  • 帰国後のCOVID-19発症状況: 8名に中等症 (帰国後5.8 - 13.5日/中央値 8.8日); VN54便搭乗者の濃厚接触者 (> 1,300名)のうち5名陽性判定 (3名はcase 1の家族; 残り2名は感染時期が偶然に一致したと判定)
考察
  • 知る限りではcase 1だけが搭乗前からCOVID-19を思わせる症状を示していたこと、その他の感染者の搭乗に至るまでならびに帰国後の動向と彼らの滞在地およびベトナムでのSARS-CoV-2の市中感染状況、および、ビジネスクラス内での感染の拡がり方などを総合して、VN54便のビジネスクラス12例はcase1からのエアロゾルまたは飛沫を介した感染と判断した。
  • エコノミークラスでの感染は、乗客については空港での搭乗前ラウンジまたは帰国時の通関からバゲッジクレームの間の接触、乗務員についてはビジネスクラスのトイレ共用が原因の可能性があるとした。
  • マスク着用: 3月1日までの英国での感染は, 検査が不十分であったとはいえわずか23例で危機感が薄かったため、搭乗にあたりマスク着用は特に推奨されていなかったことから、VN54便ではマスクはほとんど着用されていなかったと思われる
  • 今回の解析には、ゲノム解析、機内での行動の詳細、搭乗前と帰国後の行動の詳細、および帰国直後の機内の環境データが得られなかったが、case1からの機内感染という結論には自信を持っている。