[出典] "Ultrasensitive and visual detection of SARS-CoV-2 using all-in-one dual CRISPR-Cas12a assay" Ding X [..] Liu C. Nat Commun. 2020-09-18; [プロトコル] All-in-one dual CRISPR-Cas12a (AIOD-CRISPR) assay protocol for SARS-CoV-2 detection" Ding X [..] Liu C. ResearchSquare 2020-09-18. [Preprint]
[crisp_bio注] 本論文はbioRxiv 2020-03-21投稿の"Ding X, Yin K, Li Z, Liu C. All-in-One Dual CRISPR-Cas12a (AIOD-CRISPR) Assay: A Case for Rapid, Ultrasensitive and Visual Detection of Novel Coronavirus SARS-CoV-2 and HIV virus" をベースとしているように見える。
crisp_bioではbioRxiv投稿を、"2020-03-27 All-In-One Dual CRISPR-Cas12a: Cas12aの使い方を工夫したSARS-CoV-2とHIV-1の超高感度検出システム"にて取り上げた。本記事では、2020-03-27記事を再利用し、プロトコル論文 (プレプリント)の書誌情報を追加し、HIV-1検出の項に続くSARS-CoV-2検出の段落を大幅に改訂した。
UConn Healthの研究チームは今回、DETECTRと同様にCas12aのコラテラルssDNA切断活性を利用しながらも、核酸の増幅から検出までのワンポット反応 [1]と、crRNAぺアによるCas12a-crRNAの二重化 [2]による感度向上を介して、簡素、迅速、かつ超高感度であり、また視覚的判定も可能な核酸検出法を開発し、その性能をレトロウイルスのHIV-1とSARS-CoV-2を対象とするDNA/RNA検出で実証した上で、All-In-One Dual CRISPR-Cas12a (AIOD-CRISPR)法としてbioRxivに投稿し、今回、SARS-CoV-2検出の詳細をNature Communication 誌から発表するに至った。
AIOD-CRISPRアッセイの概要 [Nat Commun 論文 Fig. 1引用 右図参照]
AIOD-CRISPRアッセイの概要 [Nat Commun 論文 Fig. 1引用 右図参照]

- AIOD-CRISPRアッセイでは、核酸増幅から核酸検出までに必要な全てのコンポーネントを単一の反応装置に混合し一定温度 (37 °C)でインキュベートすることで、増幅装置と検出装置の二本立てとその間のサンプルの移動を回避している。
- 標的配列におけるフォワードプライマーとリバースプライマーの認識部位に近接した部位に結合するcrRNAsペアをもとにCas12a-crRNA複合体のペアを予め用意しておき、等温DNA増幅用プライマーを含むRPA mix, ssDNA-FQ (Fluorescence Quenching/消光状態)レポーター, リコンビナーゼ, ssDNA結合タンパク質 (SSB), strand displacement活性を帯びたDNAポリメラーゼ, および標的核酸を含む溶液に投入する。
- ワンポット反応は、RPA増幅から始まり、strand replacementを介して露出したcrRNA標的部位へのCas12a-crRNA複合体の結合を契機としてCas12aのコラテラルssDNA切断活性が発揮され、それによって切断されたssDNA-FQレポータが蛍光を発する。RPAの増幅産物も、Cas12aのコラテラルssDNA切断活性を介して、レポーターの発光に貢献する
- Fig. 1引用上図の b にあるように、全てのコンポーネントが揃った場合に限り、40分のインキュベーションを経て、青色LED光および紫外光の照射によって、レポータからの蛍光が明確に見えてくる。また、特別な光を照射しなくても、溶液の色変化を目視で判定可能であった。この結果はPAGE解析とリアルタイムの蛍光強度測定でも裏付けられた。
- 続いて、最適化を試みる中で、2種類のcrRNAsを同時使用する効果を確認すると共に、ssDNA-FQレポーターの濃度4μM以上、フォーワードとリバースのプライマー濃度それぞれ0.32μM, ならびにcrRNAsとCas12aは1:1の条件も探り当てた。
HIV-1検出 [この項はbioRxiv投稿限定でNat Commun論文には含まれていない]
- AIOD-CRISPRにより、1分のインキュベーションで、HIV-1 DNA 1.2 copiesまで検出可能であった。
- トリ骨髄芽球症ウイルス (AMV)由来逆転写酵素を介したRT-AIOD-CRISPRによりHIV-1 RNA (合成したgagの1027-nt断片)を、40分のインキュベーションで11 copiesまで検出可能であり (1.1 copiesは非検出)、血漿サンプルからの検出も、感度は低下したが、可能であった。
SARS-CoV-2検出
- SARS-CoV-2, SARS-CoVならびにMERS-CoV由来の完全長N遺伝子を帯びた市販のプラスミドに、コントロール (ヒトRPP30遺伝子の一部)のプラスミドを対象として, AIOD-CRISPRアッセイを加え、SARS-CoV-2からだけ視覚検出でもリアルタイム検出でもSARS-CoV-2に限り陽性判定が得られた。
- 次に、SARS-CoV-2 N遺伝子RNA配列を作出し、逆転写を介したAIOD-CRISPR (RT-AIOD-CRISPR)アッセイにより、~5コピーのSARS-CoV-2 N RNAまで検出可能なことを確認した。
- COVID-19患者由来を含むスワブサンプル28件 (陽性 8件)をRT-AIOD-CRISPRでアッセイし、リアルタイム測定40分、および、反応完了後の視覚検出にて、8件すべてについて陽性判定を得、また、CDC認証RT-PCR法による判定と整合した。
- さらに、電源不要の化学反応で発熱する単価30セントのハンドウオーマーによるインキュベーション20分を経ても、視覚的検出またはアプリケーションを介した画像判定が可能なことを確認した [Fig. 5参照]。
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