[出典] "Development of an ObLiGaRe Doxycycline Inducible Cas9 system for pre-clinical cancer drug discovery" Lundin A, Porritt MJ [..] Maresca M. Nat Commun. 2020-09-29. (bioRxiv. 2020-04-07)
AstraZenecaの研究グループは、Marcello Marescaらが先行研究で開発していたObLiGaReの手法 [*]を利用して、ドキシサイクリン (Dox)で発現を誘導可能なCas9のカセットをヒト細胞とマウス細胞のセーフハーバ部位に導入することで、疾患モデル細胞および疾患モデルマウスを、低コスト、高効率、高精度、短期間で樹立可能なことを示し、この発現カセットを、"Obligate Ligation-Gated Recombination (ObLiGaRe) Doxycycline In ducible SpCas9"にちなんでODInCas9と称した。

- ObLiGaReにより、各種のヒト細胞およびマウスES細胞のセーフ・ハーバー部位に、サイズ18 KbのODInCas9発現カセットを挿入した。すなわち、セーフハーバー部位に存在するZFN認識配列と逆向きの配列を、ODInCas9発現カセットに組み込んだ [Fig. 1 - a, - b を引用した右図参照]。
- ODInCas9カセットは、テトラサイクリン発現誘導システムTet-On 3Gシステムに則ってDox存在下で発現する。Dox非存在したでは、in vitroでもin vivoでもCas9の発現は検出されなかった。

- ODInCas9細胞にsgRNAをデリバリすることで、疾患モデル細胞を効率よく作出した。また、Dox投与によってODInCas9マウスの全ての組織においてCas9発現が誘導され、また、Doxの有無によるCas9発現のオンオフを繰り返すことも可能であった [短期間での細胞モデル作出のワークフローをFig. 1 - c から引用した右図参照]。
- ODInCas9の発現を厳密に制御することで、Cas9の恒常的発現に伴うオフターゲット編集の抑制効果も得られた。また、NHEJ過程を利用することで、HR過程では課題となる細胞周期との同期やドナーのサイズの制限を回避することが可能になり、編集効率も向上した。
- ODInCas9マウスの全ての組織でCas9発現を誘導が可能なこと、また、ドキシサイクリンの投与と除去を介したCas9発現のオン・オフ・オフの制御を実証した。
ODInCas9マウスについては、Dox誘導遺伝子編集を実証すると共に、sgKRAS, sgTrp53またはStk11,および, 相同組換用KrasG12C/Dテンプレートを帯びたコンストラクトをAAV9でデリバリすることで、非小細胞性肺癌 (NSCLC)腺癌のモデルを~ 12週で作出し、併用療法などの評価に利用可能なことを示した [コンストラクトについてFig. 4引用右図を参照]。
ODInCas9マウスは、これまでのモデリングの課題を解決し、ハイスループットかつ臨床現場で病態や薬剤の評価に有用なin vivoプラットフォームである。
[*] ObLiGaRe
- ObLiGaReはMarcello Marescaらが, ZFNsまたはTALENsにより、HR過程ではなくNHEJ過程を介して効率的かつ精密な遺伝子ターゲッティングが可能なことを実証した手法である (1)。
- 標的遺伝子領域内のZFN認識配列 (以下, wtZFN)と同じ配列をドナーDNAに逆向きに挿入し (以下, iv ZFNサイト)、wt ZFNとiv ZFNの双方がZFNによって同時に切断される過程を経て、ドナーDNAが標的遺伝子にライゲーションされる現象に基づいている。ここで、ZFNによって切断された2つのZFN認識配列が、HRのドナーに組み込まれる相同アームに相当する。逆向き挿入は、ZFNによる繰り返し切断を防止するための対策である [原論文 Figure 1参照]。
- なお、ObLiGareは、"挿入したい遺伝子のとなりに、標的となる配列と同じ約20塩基の配列を逆向きに挿入したドナーDNA配列を利用して遺伝子ターゲッティングを実現する"HITI法の論文 (2) で引用されている。
- "Obligate ligation-gated recombination (ObLiGaRe): custom-designed nuclease-mediated targeted integration through nonhomologous end joining" Maresca M, Lin VG, Guo N, Ynag Y. Genome Res. 2012-11-14.
- ライフサイエンス新着レビュー, 2016 ; crisp_bio 2017-05-06
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