[出典] "Generation of a conditional mutant knock-in under the control of the natural promoter using CRISPR-Cas9 and Cre-Lox systems" Thakur VS, Welford SM. PLoS One. 2020-10-02

 これまでの変異遺伝子の機能解析に利用されてきた多くの条件付き発現法は、非現実的な発現レベルでの実験結果をもたらすリスクを伴っている。University of Miamiの研究チームは今回、CRISPR-Cas9にCre-Loxシステムを組合せて、新たなCRISPR-Cas9-LoxPシステム [*]を開発し、このリスクを回避可能なことを示した。
 [*] Cre-LoxとCRISPR/Cas9を組合せた条件付き遺伝子編集の手法は早くから試みられCRISPR/Cas9-loxPという表現も使われてきている [参考: 原論文References #6 と#7]。
  • U87MG細胞株において、ポリアミン異化反応の律速酵素, Spermidine/spermine N1-acetyltransferase 1, の遺伝子 SAT1 を対象とし、イントロンとエクソンの境界、転写終結配列、その他、内在遺伝子座内部および下流に存在する調節エレメントを介した調節機構を維持したまま、変異遺伝子の条件付き発現が可能なことを実証した。2020-10-07 8.09.27
  • Fig. 1から引用した右図 A にあるように、STAT1遺伝子のエクソン (EX)3とEX4の間のイントロン3を標的とし、B のコンストラクトを、CRISPR/Cas9によるNHEJ過程を介してノックインし**、Creを加えることで、WT SAT1 EX4-EX6を除去し変異型EX4-EX6の転写を可能とする。
    [**] ノックインするコンストラクト (ドナーDNA)にも、sgRNAが認識する標的ゲノム上と同じ配列を挿入し、Cas9を介して、標的ゲノムとドナーDNAの双方を切断する手法 (これに関する原論文引用文献はこちら: NAR, 2016)
  • 右図 C の状態でWT SAT1が正常に発現することと、Dの状態で変異型SAT1に相応するフェノタイプが発現することを確認した。