[出典] "An efficient KRAB domain for CRISPRi applications in human cells" Alerasool N, Segal D, Lee H, Taipale M. Nat Methods 2020-10-05.

 University of Torontoの研究グループが57種類のKRABドメインの抑制能/repressive potency (以下, サイレンシング活性)を評価し、Zing finger imprinted 3 (ZIM3)由来のKRABドメインが突出していることを同定した。
  • CRISPRiの転写抑制因子としてこれまで、KOX1 (ZNF10)由来のKRABが利用されてきたが、サイレンシング活性が低いことから、sgRNAの最適化 [1]や、KRABにさらに抑制因子 (例 MeCP2)を追加 [2]する工夫がなされてきた。
  • ヒトゲノムにコードされているKRABドメインを帯びたタンパク質は350種類を超え、それぞれ、サイレンシングに機構や活性が異なるとされてきた。
  • 57種類のKRABドメインをdCas9のN末端に結合し、2種類のレポータ細胞で、ZIM3  KRABが、KOX1 KRABを始めとする他のタンパク質由来のKRABやKOZ1 KRAB-MeCP2に対して、サイレンシング活性が優ることを同定した。
  • 続いて、各KRABによるサイレンシングの機構についても解析を進め、ZIM3 KRABのサイレンシング活性が、TRIM28およびHP1αとの強い相互作用とその非可逆的反応を介して、他のKRABを上回ることを見出した。
  • レポーター細胞での評価結果を踏まえて、HEK293T細胞内在遺伝子座を標的とするCRISPRiや、ゲノムワイドsgRNAライブラリーの一種であるDolcetto Set Aライブラリー [2]による遺伝子必須性の判定による評価に進んだ。
     ZIM3 KRAB–dCas9, KOX1 KRAB–dCas9, KOX1 KRAB–MeCP2–dCas9とネガティブコントロールのNanoluc-dCas9を比較し、ZIM3 KRABが、サイレンシング活性が最も高く、gRNAの選択への依存度が低いことを確認できた
  • ZIM3 KRABは、KOX1 KRAB-MeCP2融合体よりも強力であることに加えて、サイズが小さいことからデリバリの観点で有利でもあり、また、小規模なgRNAライブラリーで十分なため、調節エレメントを標的とする場合や、遺伝子間相互作用解析やPerturb-Seqのような大規模なスクリーニングに最適である。
[関連crisp_bio記事]
  1. CRISPRメモ_2018/12/26 - 1[第2項] Broad研、SpyCas9によるゲノムワイドCRISPRa/CRISPRi/CRISPRkoにそれぞれ最適なsgRNAライブラリーを開発・提供
  2. CRISPRメモ_2018/07/19 [第1項] CRISPRiの性能向上 [dCas9-KRAB -> dCas9-KRAB-MeCP2