[出典] "Improving transgene expression and CRISPR-Cas9 efficiency with molecular engineering-based molecules" Zhan H, Li A [..] Liu Y. Clin Transl Med. 2020-10-04

 CRISPR-Cas9システムをプラスミド・ベクターを介して細胞に導入することで、自然免疫応答 (innate immune response: IIR)が誘導され、外来遺伝子の発現の抑制を介して、CRISPR-Cas9の活性が抑制される。The First Affiliated Hospital of Shenzhen Universityの研究チームは今回、IIRを担う因子に対するアプタマーとして機能する人工核酸分子 (artificial nucleic acid molecules: ANAMs)を、低分子に替えて利用することで、この自然免疫応答を効果的に抑制可能なことを示した。
  • 蛍光タンパク質遺伝子を帯びた293T細胞と5637癌細胞をレポーター細胞として、ANAMsはβカテニンとNF-κBのそれぞれに結合するアプタマーに加えて双方に結合するアプタマー (ANAM-β-κB)も作出・評価し、ANAM-β-κBが外来遺伝子の発現を最も亢進することを見い出し、それが、ANAM-β-κBのIIR抑制効果によるものであることを示した。
  • レポータ細胞をプラットフォームとして、ANAM-β-κBが、CRISPR-Cas9の変異誘導効率と共に、ドナーDNAを介した相同組換修復の効率も向上することを確認した。
  • ANAM-β-κBは内在遺伝子 (DNMT1MED7)を標的とするCas9編集に対しても同様の効果を示した。
  • ANAM-β-κBは、dCas9をベースとするCRISPRaとCRISPRiの活性向上にも寄与した。
  • ANAM-β-κBは、癌細胞のCRISPR-Cas9遺伝子編集とCRISPRaの活性向上にも効果的であり、また、Bcl-2/Baxを標的とするCRISPR-Cas9による癌細胞の細胞死を亢進することを見出した。