[出典] "SARS-CoV-2 neutralizing antibody structures inform therapeutic strategies" Barnes CO [..] Bjorkman PJ. Nature. 2020-10-12.
リネジェロン社の抗体カクテルREGN-COV2 やイーライリリー社のLY-CoV555を始めとして、SARS-CoV-2のスパイク(S)タンパク質のACE2受容体結合ドメイン (RBD)を標的とするヒト中和抗体 (human neutralizing antibodies: hNAbs) によるCOVID-19治療の治験が進行している。
California Institute of TechnologyにRockefeller Universityが加わった研究グループは今回、SARS-CoV-2中和の構造基盤を明らかにすることを目的として、SARS-CoV-2のSタンパク質三量体[*]またはSタンパク質のRBDとCOVID-19 hNAbsとの複合体8種類の構造をX線結晶構造解析とクライオ電顕法により明らかにし、また、生物物理学およびバイオインフォマティクスによる解析を加え、複合体の構造とRBD-ACE2の結合をブロックする活性との関係を比較した。
hNAbsに見えてきた4つのクラス
[**crisp_bio注] リジェネロン社の抗体カクテルを構成する2種類のモノクローナル抗体REGN10933とREGN10987はそれぞれクラス1とクラス3に分類された [crisp_bio 2020-20-12参照] 。
構造情報 (2020-10-13現在公開待ち; 10月21日と28日で全エントリー公開済み)
リネジェロン社の抗体カクテルREGN-COV2 やイーライリリー社のLY-CoV555を始めとして、SARS-CoV-2のスパイク(S)タンパク質のACE2受容体結合ドメイン (RBD)を標的とするヒト中和抗体 (human neutralizing antibodies: hNAbs) によるCOVID-19治療の治験が進行している。
California Institute of TechnologyにRockefeller Universityが加わった研究グループは今回、SARS-CoV-2中和の構造基盤を明らかにすることを目的として、SARS-CoV-2のSタンパク質三量体[*]またはSタンパク質のRBDとCOVID-19 hNAbsとの複合体8種類の構造をX線結晶構造解析とクライオ電顕法により明らかにし、また、生物物理学およびバイオインフォマティクスによる解析を加え、複合体の構造とRBD-ACE2の結合をブロックする活性との関係を比較した。
[*crisp_bio注] Sタンパク質は3つの同じ鎖で構成されているが、鎖ごとに、RBDがACE2に結合可能なコンフォメーション(up)をとったり、受容体がアクセス不可能な配置 (down)をとったりする柔軟性を備えている: crisp_bio 2020-03-02の中盤, または, crisp_bio 2020-06-05 参照]
hNAbsに見えてきた4つのクラス
- [クラス1] ACE2の結合をブロックする短いCDRH3を帯びており、"up"状態のRBDsに限り結合するhNAbs
- [クラス2] 結合サイトがRBDのACE2結合サイトと重なり, RBDの"up"状態と"down"状態のRBDのいずれも認識するhNAbs。クラス2に属する長いCDR H3を帯びているhNAbは、結合した"down" RBDに隣接するRDBsにも接触し、三量体のRBDs全てを"down" 状態に固定、すなわち、Sタンパク質を閉じたコンフォメーションに固定する。
- [クラス3] ACE2結合サイト以外のRBD領域に結合し、"up"状態と"down"状態の双方のRBDsを認識するhNAbs
- [クラス4 ]"up"状態のRBDsに結合するが、Sタンパク質のACE2への結合をブロックしない抗体
[参考: crisp_bio 2020-04-04 "SARS-CoV中和抗体との結合から見えてきたSARS-CoV-2エピトープは標的足り得るか"参照: CR3022がSARS-CoV-2のRBDに結合することが報告されていたが、CR3022はSARS-CoV-2を中和するに至らなかった]
[**crisp_bio注] リジェネロン社の抗体カクテルを構成する2種類のモノクローナル抗体REGN10933とREGN10987はそれぞれクラス1とクラス3に分類された [crisp_bio 2020-20-12参照] 。
構造情報 (2020-10-13現在公開待ち; 10月21日と28日で全エントリー公開済み)
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