[出典] "Conditional guide RNA through two intermediate hairpins for programmable CRISPR/Cas9 function: building regulatory connections between endogenous RNA expressions" Lin J, Liu Y, Lai P, Ye H, Xu L. Nucleic Acids Res. 2020-10-17.
中山大学 (Sun Yat-Sen U) の研究チームは今回、CRISPR-Cas9によるゲノム編集にあたり、gRNAとは独立なRNAを外部から導入することで、gRNAの発現、ひいてはCRISPR-Cas9システムの活性、を誘導するシステムを、2種類のRNAヘアピン構造をベースとするRNAトーホールドスイッチを利用することで、実現した:

- 右図に、トリガーRNA Xから、遺伝子Yを標的とするgRNA-Yの発現を介したdCas9-gRNAシステムの活性化の模式図をFigure 1から引用。
- 左下図に、トリガーRNAによって、二段階トーホールドスイッチを介して消光状態に設定しておいたレポーター二本鎖が発光するに至る過程でのRNA鎖の置換が進行するモデル図をFigure 2から引用
- 上右図に、HEK293T細胞におけるCRISPRa制御の例をFigure 6から引用
[補足]
DNA/RNAを素子とする分子コンピューティングと鎖置換
DNAを素子とする分子コンピューティングのベース(素子)は、DNA二本鎖における一本鎖置換反応である。二本鎖を形成する2種類の一本鎖 (A1とB)のうち一方(A1)が、第3の一本鎖 (A2)によってBから引き剥がされて、A2がBと二本鎖を形成する反応である。通常、B鎖は、A1そしてまたはA2のtoehold [トーホールド/足(指)がかり]となる配列を帯びており、この配列を介した誤動作が合成回路構築上の課題となっている。
RNAトーホールドスイッチ
RNA素子についてもDNA素子と同じく鎖置換反応をベースとする情報伝達の工夫がなされていたが、2014年にWyss Instituteの研究グループが、タンパク質をコードするRNA (以下、コーディングRNA)からの翻訳を、トリガーとなるRNA (トリガーRNA)を加えることで操作可能なトーホールド・スイッチを開発した。
このトーホールド・スイッチは、(1) タンパク質をコードしているRNA配列、(2) リボソーム結合配列と翻訳開始配列とリンカー, および (3)トリガーRNAと完全に相補的な配列 (ターゲットRNA)で構成され、ターゲットRNAとコーディングRNAの境界領域にヘアピン構造を帯びている (トリガーRNAと発現させたいRNAとがリンカーを介して連結されている) [2020-10-27 17:00頃、この段落にける文の重複などの混乱を整理]。
こうして、トリガーRNAが存在していない状態では、コーディングRNAのタンパク質への翻訳がヘアピン構造によって阻害されているが、トリガーRNAが存在するとヘアピン構造が解消されてコーディングRNAの翻訳が始まる[Wyss Instituteのビデオ参照]。
"Toehold switches: de-novo-designed regulators of gene expression" Green AA, Silver PA, Collins JJ, Yin P. Cell. 2014;159: 925-939 PMC4265554
CRISPRによる遺伝子発現の抑制/活性化システム (CRISPRi/a)とその制御
RNAトーホールドスイッチの開発とは独立に一方で、CRISPR技術をベースとして遺伝子発現を抑制ツール (CRISPRi)と活性化するツール(CRISPRa)が2013年から相次いで発表された。その後、CRISPRi/aを含むCRISR/Cas9活性の時空間制御の工夫が続き、その中には、gRNAを鎖置換/トーホールド・スイッチで制御する提案も含まれていた [*]。
[*] 関連論文とcrisp_bio記事
- "Riboregulated toehold-gated gRNA for programmable CRISPR-Cas9 function" Siu KH, Chen W. Nat. Chem. Biol. 2019-12-10. (PubMed 30531984)
- 2019-06-10 RNAでgRNAを御し、バクテリアとヒト細胞においてCRISPRi/aを御す
- Switching the activity of Cas12a using guide RNA strand displacement circuits. Oesinghaus L, Simmel FC. Nat Commun. 2019-05-07.


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