[出典] "Cas9 gene therapy for Angelman syndrome traps Ube3a-ATS long non-coding RNA" Wolter JM, Mao H [..] Zylka MJ. Nature. 2020-10-21

 アンジェルマン症候群 (Angelman syndrome: AS)は、母性遺伝のUBE3Aアレルの変異または欠失が病因となる重篤な神経発達障害群である。父性遺伝のUBE3Aアレルは、神経細胞では、UBE3A-ATSと命名されたlncRNAによってcisに不活性化 ('silenced')されている。

 University of North Carolina at Chapel Hillの研究グループは今回マウスとヒトの培養神経細胞において、Ube3a-ATSの3'末端領域にクラスターを形成しているsnoRNAs (Snord115遺伝子群)を標的とするCas9によって、父性遺伝のUbe3aを活性化 ('unsilence')可能なことを見出した。

 続いてASモデルマウスを対象として、Ube3aを修復する治療効果が最も高いとされる胚形成期と生後初期の時期に、SaCas9と75個のSnord115遺伝子を標的とするgRNAをAAV9ベクターにて、 左右の側脳室へ注入した。
  • 導入後少なくとも17ヶ月間、父性遺伝のUbe3aが発現し、ASモデルマウスの組織的および行動上のフェノタイプが修復された。
  • AAVベクターが宿主ゲノム上のCas9-gRNAの標的部位に順方向に組み込まれるとベクター由来のpoly Aカセットにて未成熟終止コドンが誘導され、また、逆方向に組み込まれるとAAVに由来するCas9転写物との衝突を介して、Ube3a-ATSが不活性化される。