2020-11-27 更新 Science論文, 冊子体での出版に合わせてブログ記事を見直した結果、「3Dヒト脳オルガノイドのCRISPR機能喪失スクリーンにより、小頭症関連する遺伝子群とパスウエイを新たに同定 」から「ヒト脳オルガノイドにてCRISPR KOスクリーンと細胞系譜追跡を介して, 小頭症関連候補遺伝子群から病因遺伝子とパスウエイ同定」に改訂, 本文には改訂なし。
2020-11-02 初稿
-----------------------
[出典] "A human tissue screen identifies a regulator of ER secretion as a brain size determinant" Esk C, Lindenhofer D [..] Knoblich JA. Science. 2020-11-20 (online10-29).

 これまでに、小頭症に関連する遺伝子27種類とパスウエイ2種類 (中心小体/紡錘体の生合成とDNA損傷応答)が同定され、その過程で、脳のサイズを調節する遺伝子とパスウエイに関する知見も得られてきた。一方で、臨床ゲノムシーケンシングデータから小頭症に関連する遺伝子候補が100以上同定されているが、2次元の培養細胞やマウスモデルでは小頭症の表現型を完全には再現することができず、小頭症における各遺伝子の機能を同定するには至らなかった。

 Institute of Molecular Biotechnology of the Austrian Academy of Science (IMBA)を主とするオーストリアの研究グループは、プール型CRISPR機能喪失 (LOF)スクリーンにより、小頭症病因遺伝子候補173種類から25種類の遺伝子が、既知あるいは新奇な小頭症関連パスウエイに含まれていることを同定した。
  • 研究グループは中でも、Immediate Early Response 3 Interacting Protein 1 (IER3IP1)が、組織の完全性の鍵を握る小胞体ストレス応答(Unfolded protein response; UPR)と細胞外マトリックス (Extracellular Matrix)タンパク質分泌を調節し、その機能不全が小頭症をもたらすことを明らかにした。
  • 利用したCRISPR-Casシステムは、高精度なeCas9-1.1 (以下、eCas9) [*]とgRNAsのライブラリーをベースとし、lox-STOP-loxによるeCas9の発現抑止と4-OHTを組み合わせたCre誘導性システムである。
  • 小頭症研究のモデルとするヒト背側前脳オルガノイドは、 WA09 (H9)ヒトES細胞から誘導し、モデル足り得ることを確認した。
  • H9細胞には、細胞系譜追跡用 (lineage barcode: LB)のウイルスDNAバーコードを導入し、H9細胞からの分化の過程に沿って細胞系譜ごとのバーコード量を比較し、2D細胞培養では一様であったのに対して、3Dオルガノイド培養では非一様であることを見出した [Fig.1-E/F参照]。
  • この3Dオルガノイド培養における細胞系譜に依存する細胞数の内在性変動と、eCas9-sgRNAの標的となった遺伝子のLOFの効果による細胞数の変動を切り分けるために、H9細胞へのgRNA-LBの導入に加えて、CRISPR LOFスクリーンの読み出し過程である各細胞のゲノムDNA PCRの段階で細胞識別用バーコード (cell barcode: CB)を導入し、細胞系譜ごとの細胞数を正確に測る手順を組み込んだCRISPR-LIneage tracing at Cellular resolution in Heterogenous Tissue (CRISPR-LICHT)パイプラインを構築するに至った[Fig. 2参照] 。
 [*] eCas9関連crisp_bio記事
  • CRISPR関連文献メモ_2015/12/02 [第1項] "eSpCas9": Cas9/sgRBA/標的DNA三者複合体の構造に基づいて、オフターゲット編集を検出限界以下まで抑制するCas9変異体を作出
  • CRISPRメモ_2017/11/20 [第1項] 高い特異性を示すeCas9-1.1とCas9-HF1の弱点とその克服