[出典] "Development of aptamer-based inhibitors for CRISPR/Cas system" Zhao J, Inomata R, Kato Y, Miyagishi M. Nucleic Acids Res 2020-10-30

 CRISPR-Cas9によるゲノム編集のオフターゲット活性と細胞毒性を、Cas9の過剰または恒常的発現を抑制することで、低減する試みが続いている。その中で、天然に存在する抗CRISPRタンパク質 (anti-CRISPR proteins: Acrs)*の利用も試みられ、SpCas9の活性制御にAcrIIA2, AcrIIA4およびAcrIIA5が利用されている。
[*] CRISPR関連文献メモ_2016/12/16 [第2項] CRISPR/Cas9活性の天然オフ・スイッチ

 AcrsがSpCas9の活性を阻害する機構が多彩なことが知られているが、興味深いことにAcrIIA2とAcrIIA4はDNAをミミックしてSpCas9内のPAM結合 (PI)ドメインに結合する機構によってSpCas9の活性を阻害する。産総研の研究グループは今回、Cas9の過剰または恒常的な活性を阻害する一連のDNAアプタマーを、試験管内選択法 (SELEX法)に続く切断活性のin vitroアッセイによってスクリーニングすることで構築した。
  • DNAアプタマーのCas9への結合親和性は低ナノモル濃度であり、CRISPR RNAと部分的な二重鎖を形成することで、Cas9の活性を阻害するに至る
    [参考] 左下図はFigure 2 (c)を引用した3種類のDNAアプタマーのcrRNAとのヘテロ二重鎖形成モデル図); 右下図は、Figure 7から引用したFlap-type aptamaerによるCas9活性阻害機構のモデル図
     2020-11-05 13.37.41  2020-11-05 13.42.22
  • また、架橋構造を帯びた核酸 (Locked Nucleic Acid: LNA)を利用することで、DNAアプタマーのCas9ゲノム編集を効果的に抑制しオフターゲット編集を縮減できることを示した。
  • DNAアプタマーによるCas9の活性抑制法は、Acr (anti-CRISPR)タンパク質による抑制法に対して、数々のメリットがある: 簡便で低コストな化学合成, 化学修飾に寛容, 長い貯蔵寿命, 高安定性、および、低免疫原性