[出典]"It is unclear how important CRISPR-Cas systems are for protecting natural populations of bacteria against infections by mobile genetic elements" Westra ER, Levin BR. Proc Natl Acad Sci U S A. 2020-10-29

 著者らは、in vitroで実証されてきたバクテリアとアーケア (以下、微生物)のCRISPR-Casシステムが、有害なMGEsの感染から微生物を保護することを認めた上で、環境の中で、一連のCRISPR-Casシステムが微生物およびファージその他のMGEsの生態と進化に与える影響の強さと広がりが不明であるとして、その解明に向けて、文献調査とコンピューターシミュレーションを行った。

 具体的には、(1) CRISPR-Casシステムが有害なMGEsの感染から微生物集団を保護する事象はどれほど一般的なの? (2) MGEs感染からの選択圧を受けながら維持されているCRISPR-Casシステムの広がりは? の観点から以下の4つの点を明らかにすることを目指して、溶菌ファージ、溶原ファージ、および接合性プラスミドそれぞれの感染について、発見的コンピュータシミュレーションを進め、既存の公開データの再解析の結果と照合した:
  1. CRISPR-Casシステムが選択される条件
  2. 機能性CRISPR-Casシステムを帯びた微生物が、それを帯びていない微生物集団に侵入する条件
  3. CRISPR免疫システムが、微生物とMGEsの個体群動態, 生態および進化に及ぼす影響
  4. 感染時に宿主微生物のスペーサ獲得を許すMGEsの特徴
 その結果、課題の解明にはMGEsに応答するスペーサ獲得がおこならかったネガティブデータの取得と公表が必須であるとした。