2020-12-12 13.49.132020-12-12 筆頭・共同責任著者のMouse Genome Engineering Core Facility (U. Nebraska Medical Center)のディレクターChannabasavaiah B. Gurumurthy教授のメッセージが込められた力作イラストを, 教授の好意により右図に引用
----------------------
2020-11-15 初稿
[出典] PERSPECTIVE "Genetically modified mouse models to help fight COVID-19" Gurumurthy CB [..] Mansour SL, Ohtuska M. Nat Protoc 2020-10-26.

 COVID-19に対して有効な既存の抗ウイルス薬の同定と新規治療薬とワクチンの実現を目指して、SARS-CoV-2感染症の分子機構の研究が '超速' [1, 2]で進められている。この研究にあたって大きな課題の一つがCOIVD-19モデル動物である。

 COVID-19モデル動物はこれまで、マウス、ハムスター、ネコ、フェレット、およびサルの実績があるが、マウスについては、SARS-Co-V-2に対する耐性を帯びていることから、SARS-CoV-2感染の標的となるヒトの受容体ACE2 (hACE2)を人為的に発現させる必要がある。

 
hACE2を発現するマウス系統は、2003年にアウトブレイクしたSARS-CoV-1の研究過程ですでに開発されており、SARS-CoV-2の複製を許すことが確認された。しかし、COVIDー19患者に見られる症状を正確に再現するに至っていない。その原因は、(1) マウスのACE2 (mACE2)も発現している, (2) hACE2を発現させるプロモーターがmACE2を発現させるプロモータと異なり、両者の発現の様態が異なる, (3) hACE2の発現の時空間制御がなされていない、(4) hACE2の発現に影響を及ぼす基礎疾患を反映するモデルに至っていない、ことにある。

 SARS-CoV-2/COVID-19の感染と発症には未だ不明な点が多々あるが、呼吸器だけでなく、循環器、消化器、および神経システムに影響を及ぼすことが明らかになり、また、hACE2の発現レベルが組織によって異なる*ことも明らかになってきた [* 肺細胞では低レベルであり、その他の組織で高レベルなど]。したがって、COVID-19モデル動物には組織別、病態、遺伝的背景などの条件付きの実験を可能にする特性が求められる。

 東海大学とUniversity of Nebraska Medical CenterにUniversity of SussexとUniversity of Utah が加わった研究グループは今回、遺伝子改変マウスモデル (Genetically modified mouse model: GEMMs)がCOVID-19モデル動物として最適と考え、3つのカテゴリーのGEMMsとそれぞれに応じたGEMMs総計30種類の設計を提案した [Table 1参照]
  • GEMMカテゴリー1: mAce2をノックアウトとhACE2とレポーターまたはhTMPRS2のノックイン; mAce2にSARS-CoV-2を受容可能とする点変異をノックイン (設計 15種類)
  • GEMMカテゴリー2: 既存のレポーター系統のセーフハーバ部位に、CRE活性化またはテトラサイクリン誘導性hACE2発現カセットをノックイン (設計 6種類)
  • GEMMカテゴリー3: mAce2をノックアウトし, CRE活性化hACE2またはhACE2/hTMPRSS2発現カセットをノックイン (設計 9種類)
 総計30種類のモデルの、特に、hACE2と点変異のノックイン、ファウンダーマウスは、Easi-CRISPR [3, 4]そしてまたはi-GONAD [5, 6]法により、~2ヶ月で作出可能である。

 COVID-19モデルマウスとして今後、(1) hACE2hTMPRSS2の遺伝子ノックインに加えて、FURINプロテアーゼ遺伝子のノックイン, (2) hACE2hTMPRSS2の遺伝子多型反映, (3) 多彩なヒト疾患モデルマウス系統の活用 (肥満, 自己免疫疾患, 循環器症, 高血圧, 不整脈など), (4) 遺伝的に多様な"Collaborative Cross (CC)"マウスの利用 (SARS-CoV-1感受性遺伝子同定例あり)、が期待される。

 [参考crisp_bio記事]
  1. 2020-05-16 新型コロナウイルス:超速のタンパク質構造解析ストーリー
  2. 米国ではOperation Warp Speedと命名されたワクチン開発プロジェクトが進行中 (HHS.gov Webサイト参照
  3. CRISPRメモ_2017/12/22 [第1項] Easi-CRISPR:長鎖一本鎖を利用してノックインマウスとコンディショナルノックアウトマウスを高効率で作出する法
  4. CRISPRメモ_2018/03/03 [第7項] [ハイライト] CRISPR/Cas9ゲノム編集技術により再定義されたマウス遺伝子操作法
  5. CRISPRメモ_2018/03/04 [第1項] i-GONAD:CRISPRヌクレアーゼによる安定したin situ生殖細胞ゲノム編集法
  6. CRISPRメモ_2019/07/25 [第1項] [プロトコル] i-GONAD