[出典] "Structural Basis for Toxin Inhibition in the VapXD Toxin-Antitoxin System" Bertelsen MB [..] Brodersen DE. Structure 2020-10-22. https://doi.org/10.1016/j.str.2020.10.002
[PDB公開構造] 6ZN8 Crystal structure of the H. influenzae VapXD toxin-antitoxin complex; 6ZI0 Crystal structure of the isolated H. influenzae VapD toxin (wildtype); 6ZI1 Crystal structure of the isolated H. influenzae VapD toxin (D7N mutant)

 バクテリアのタイプIIトキシン-アンチトキシン (toxin-antitoxin: TA)モジュールは、代謝を抑制する毒性タンパク質と、正常な成長過程でトキシンに結合し阻害するアンチトキシンをコードしている。無莢膜型インフルエンザ菌 (non-typeable Haemophilus influenzae: NTHi)の場合は、VapXD遺伝子座が機能性TAモジュールを構成する病原性因子とされているが、VapDの作用機序とVapXによる阻害の機序は不明であった。

 Aarhus University (デンマーク)にOld Dominion University (米)が加わった研究グループは今回、VapXD TA複合体とVapDのX線結晶構造解析から、VapXがVapDを抑制する構造基盤を明らかにし、また、VapDからCRISPR/Casシステムのサブユニットの一つであるCas2への進化を論じた。
  • NTHiのVapXD複合体のTA化学量論比は例外的な2:1である。VapDのホモ二量体が単一のVapXアンチトキシンと結合している。
  • VapDの構造はCRISPR関連タンパク質の一種であるCas2[*]と相同である。 [* Cas2は、CRISPR/Casシステムにおいてヌクレアーゼとして機能しスペーサ獲得に関与する因子である]
  • NTHiのVapXアンチトキシンは、例外的に、天然変性領域もDNA結合ドメインを帯びておらず、オリゴヌクレオチド/オリゴサッカライド結合ドメイン (oligonucleotide/oligosaccharide-binding: OB)フォールドを帯びた単一ドメインの分子である。
  • このコンパクトなVapXが、VapD二量体を構成する単量体の間のクレフトに入り込んで2つのVapDとヘテロ三量体を形成する[Graphical Abstract参照]。
  • さらに、このヘテロ三量体は、3つ集合することでリング状の高次構造をとる [Figure 1-C参照]。
  • OBフォールドは核酸結合フォールドとして知られているが、NTHi TAでは、タンパク質 (VapD)に結合へと「進化」したことが示唆される。
  • 著者らは、Kooninグループのcasposon[**]仮説も引用しながら、原始的TAシステムからCRISPR/CasシステムのCas2への進化の過程についても論じた。
[**] Casposon関連論文とレビュー
  1. 論文 "Casposons: a new superfamily of self-synthesizing DNA transposons at the origin of prokaryotic CRISPR-Cas immunity" Krupovic M, Makarova KS, Forterre P, Prangishvili D, Koonin EV. BMC Biol. 2014-05-19.
  2. レビュー “Mobile genetic elements and evolution of CRISPR-Cas systems: all the way there and back.” Koonin EV, Makarova KS. Genome Biol Evol. 18 September 2017