[出典] "CRISPR-mediated BMP9 ablation promotes liver steatosis via the down-regulation of PPARα expression" Yang Z, Li P, Shang Q [..] Ge S, Jia R, Fan X. Sci Adv. 2020-11-27. https://doi.org/10.1126/sciadv.abc5022

 肥満に伴って脂肪肝を特徴とする非アルコール性脂肪性肝疾患 (NAFLD)が発症する。TGF-βファミリーに属する骨形成タンパク質は (Bone Morphogenetic Protein, BMP)は文字通り骨組織や軟骨の分化を誘導するタンパク質として同定されたが、BMP2, BMP4, BMP7, およびBMP8は、代謝性疾患とエネルギー消費に関与することが報告されてきたが、BMP9の関与は不明であった。上海交通大学医学院の研究グループは今回初めて、BMP9も代謝、ひいては、メタボリックシンドロームに関与することを示した。
  • 高脂肪食を摂取したマウス、肥満疾患モデルのdb/dbマウス、およびNAFLD患者において、肝臓と血清でのBMP9レベルが低下していた。
  • BMP9のノックダウンは、Hepa1-6 マウス肝癌細胞株に脂質の異常な蓄積をもたらした。
  • CRISPR-Cas9によりBMP9をノックアウトしたマウスは脂肪肝と肥満関連代謝性合併症を呈した。
  • 2020-11-30 21.08.24BMP9のノックアウトは、脂質代謝のマスター因子であるPPARα (peroxisome proliferator-activated receptor α)のプロモーターの活性とPPARαの発現を抑制し、ひいては、脂質酸化遺伝子の発現を抑制し、トリグリセリドの恒常性を失わせ、脂肪肝, 肥満, インスリン抵抗性および高血糖症をもたらした。この結果と整合して、組換えBMP9がin vitroで、p-smadの活性化を介してPPARαプロモーターの活性を亢進することで、トリグリセリドの蓄積を抑制した。また、代謝異常モデルマウスin vivoにおいても、AAV8を介したBMP9の過剰発現が、脂肪肝および肥満関連メタボリックシンドロームを軽減した [Fig. 6 -M 引用右図参照]。
 これらの結果は、BMP9が肝臓において脂質代謝をPPARα依存で調節する主要な因子であり、NAFLDと肥満の治療標的候補であることを示した。