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2025-06-14 鎌状赤血球症治療薬BEAM-101は、第I/II相BEACON試験において17名の患者において高い安全性と有効性を示した。全患者において、ヘモグロビンF(HbF)誘導率の60%超、ヘモグロビンS(HbS)減少率の40%未満、および貧血の消失が達成された [Beam Therapeuticsの2025年6月13日付けプレス発表より]。

2025-06-07 米国FDAが鎌状赤血球症(SCD)の治療薬としてBEAM-101を希少疾病用医薬品に指定した.
[出典] Press Release "Beam Therapeutics Announces U.S. FDA Orphan Drug Designation Granted to BEAM-101 for the Treatment of Sickle Cell Disease" Beam Therapeutics. 2025-06-03.
https://investors.beamtx.com/news-releases/news-release-details/beam-therapeutics-announces-us-fda-orphan-drug-designation-0

2024-11-07
Beam Therapeuticsが"BEACON"試験からの中間データを発表した 。6名の被験者のうち1名が死亡したが、BEAM-101が原因ではなく、生体外でABEで編集した自己造血細胞を移植する前処理(ブスルファン・コンディショニング)にあるとされた.
[出典] Press Release "Beam Therapeutics to Present Data Across Hematology Franchise, Including First Clinical Data for BEAM-101 in Sickle Cell Disease and ESCAPE Non-human Primate Data, at American Society of Hematology (ASH) Annual Meeting" Beam Therapeutics 2024-11-05. 

  • 重症血管閉塞性クリーゼ(vaso-occlusive crises: VOCs)を有する鎌状赤血球症(SCD)患者を対象に、BEAM-101の単回投与の安全性と有効性を評価する第1/2相単群非盲検臨床試験"BEACON"の2024年7月2日データカット時点での中間報告。
  • 初期の安全性プロファイルは、移植前処置としてのブスルファン・コンディショニングおよび自家造血幹細胞移植(HSCT)と一致していた。
  • 投与された全患者(n=6)において、BEAM-101による治療に関連したグレード3以上の有害事象(AE)および重篤なAEは認められなかった。
  • 1人の患者がBEAM-101投与4ヵ月後に呼吸不全により死亡したが、治験責任医師によりブスルファン・コンディショニングに関連している可能性が高いと判断され、BEAM-101とは無関係とみなされた。ブスルファンの作用は、個人差が大きいことでも知られている。この症例は、データ安全性モニタリング委員会および米国食品医薬品局(U.S. Food and Drug Administration)によって検討され、プロトコルを変更しないままの臨床試験継続が認められた。ブスルファン・コンディショニングの影響は個人差が大きく、ブスルファンの血中濃度のコントロールに注意が必要なことが、知られている。また、肺合併症は、ブスルファンなどの化学療法による骨髄分離療法や幹細胞移植を受ける患者の罹患率や、まれに死亡率の原因として知られている。
  • 全例が1回または2回の動員サイクル(平均1.5回)で目標細胞量を達成した。
  • 追跡期間1ヵ月以上の4例全例が、好中球と血小板の生着をそれぞれ中央値17日(15-19日)と20日(11-34日)で達成した。
  • 4例全例で、1ヵ月目までに胎児ヘモグロビン(HbF)が迅速かつ強固に誘導され(60%以上)、それに伴って非輸血血液中の鎌状ヘモグロビン(HbS)が減少(36%以下)し、それは長期にわたって持続した。
  • 溶血マーカーは4例すべてで正常化または改善した。
  • 治療後のVOCは報告されなかった。
  • これらのデータは、SCDの治療法としてのHBG1/2プロモーターの塩基編集と、現在進行中のBEAM-101の開発を支持するものである。
  • Beam Therapeuticsは、ブスルファン・コンディショニングよりも安全な前処理法を検討している。
  • 2024年12月9日に予定されているASH https://www.hematology.org/meetings/annual-meeting での発表では、より多くの患者、より長期間の追跡調査による追加データが含まれる予定である。

2023-07-11 関連crisp_bio記事「塩基エディター (ABE)により胎児ヘモグロビンの発現を強力かつ一様に誘導する

2022-11-15
更新 Beam Therapeutics社、更新 BEAM-101 BEACON試験に最初の患者が登録されたと発表 [注]ブログ記事タイトルを「Beam Therapeuticsが進めているABEをベースとする鎌状赤血球症遺伝子治療薬IDAヘ」から「Beam Therapeuticsの塩基エディターによるSCD療法の臨床試験に着手」へと改訂

  • BEAM Therapeuticsは、重症鎌状赤血球症(SCD)の成人患者を対象としてBEAM-101の安全性と有効性を評価することを目的とする1/2相臨床試験"BEACON"2022830日に立ち上げていた [https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT05456880]
  • 塩基エディターABEをベースとするBEAM-101は、前臨床試験にて、90%以上のHSC編集効率と、ヘモグロビンの60%以上でのHbFの発現上昇、および、ヘモグロビンの40%未満について疾患の原因となるタンパク質HbSの減少(ヘモグロビン全体の40%未満)を示していた。

[出典] Press Release "Beam Therapeutics Enrolls First Patient in BEACON Clinical Trial of BEAM-101 Base Editing Therapy Candidate for the Treatment of Sickle Cell Disease" GlobalNewswire 2022-11-14

 
2021-11-10 更新  FDA, Beam TherapeuticsのABEをベースとする生体外塩基編集細胞療法BEAM-101を,塩基エディターによる治療法として初の治療新薬/IND (Investigational New Drug) 承認
[出典] Beam Therapeutics Press Release  (Globe Newswire). "Beam Therapeutics Provides Business and Pipeline Updates and Reports Third Quarter 2021 Financial Results" 2021-11-08 06:00 AM EST. https://investors.beamtx.com/news-releases/news-release-details/beam-therapeutics-provides-business-and-pipeline-updates-and-0
  • BEAM-101 [2020-12-06 初稿の第1項参照]は、ヘモグロビン異常症である鎌状赤血球症 (SCD)およびβサラセミアの単回投与薬として開発された自己造血細胞治療薬であるが,今回は,SCD治療薬としての臨床評価を行うことが承認された.
  • Beam Therapeuticsは,BEAM-101の安全性と有効性を評価するためのフェーズ1/2臨床試験であるBEACON-101試験の準備を進めている.
  • Beam Therapeuticsは,BEAM-102 [2020-12-06 初稿の第2項目参照]のIND申請に向けた試験も進めている.
  • プレスリリースでは,T細胞型急性リンパ性白血病や糖原病Ia型 (R83C変異)を標的とする塩基編集療法に取り組んでいることにも言及している.
  • [crisp_bio注]ブログ記事のタイトルを「BBeam Therapeuticsが進めているABEをベースとする鎌状赤血球症遺伝子治療薬IDAヘ」へと改訂.
2020-12-06 初稿
[出典] "Beam Therapeutics Presents Updated Data from Novel Base Editing Programs for Sickle Cell Disease at ASH 2020" Beam Therapeutics/GlobeNewswire. 2020-12-05 07:00 ET
[注] ASH2020は第62回米国血液学会議を意味する; Beam TherapeuticsはLiu, Joung, Zhangらが共同設立したスタートアップ企業 [crisp_bio 2020-05-01更新記事参照]

1. ABEによる胎児型ヘモグロビン発現活性化にあたり、オフターゲット編集を伴わないことを確認 [BEAM-101に相当]
[出典] "Adenine Base Editing of the Sickle Allele in CD34+ Hematopoietic Stem and Progenitor Cells Eliminates Hemoglobin S" ASH Session 801 #1543. 2020-12-05. https://ash.confex.com/ash/2020/webprogram/Paper141805.html

 成人になっても胎児型ヘモグロビンを高レベルで発現している遺伝性高胎児ヘモグロビン血症 (HPFH)患者は、鎌状赤血球症 (SCD)やβ-サラセミアの患者に比べて症状が軽く通常の日常生活を送ることができる。

 Beam Therapeuticsはこれまでに、CD34+陽性造血幹細胞・前駆細胞において、γグロビン遺伝子プロモーター (HBG1とHBG2)を標的とするABEv2 により、遺伝性高胎児ヘモグロビン血症 (HPFH)に見られる1塩基多型を> 90%の効率で再現し、γ-グロビンの発現を > 60%向上させることに成功していた。

 Beam Therapeuticsは今回、生化学的分析、多重化アンプリコンシーケンシング、一細胞WGS、トランスクリプトームワイドのRNAシーケンシングにより、HPFH変異を再現するABEv2 (BEAM101)が、ゲノムDNAの標的領域にも非標的領域にもオフターゲット編集を誘導せず、また、トランスクリプトームワイドでRNAの脱アミノ化を誘導しないことを確認した。

 [ABEオフターゲット関連crisp_bio記事]
  • crisp_bio 2020-10-01 microABE: SaCas9をベースとしオールインワンAAVにて送達可能かつRNAオフターゲット編集活性がミニマムなABE
  • crisp_bio 2019-03-11 A-to-G塩基置換法ABEのオフターゲット作用の評価と抑制
2. 鎌状赤血球症の病因HbS変異をABEにより病原性が無いMakassar β-グロビンMakassar変異(HbG)へと変換 [BEAM-102に相当]
[出典] "Adenine Base Editing of the Sickle Allele in CD34+ Hematopoietic Stem and Progenitor Cells Eliminates Hemoglobin S" ASH Session 801 #1543. 2020-12-05. https://ash.confex.com/ash/2020/webprogram/Paper141805.html

 HbS変異 (注: SはSCDに由来する)は、βグロビン遺伝子の6番目のコドンのGAG (Glu)のGTG (Val)への変異である。Beam Therapeuticsは、ABEのA-TをG-Cに変換する機能を利用して、GTG (Val)をMakassar変異GCG (Ala)に変換するMakassar base editing programを進めてきた。
  • SCD患者由来のCD34陽性細胞において、ヘテロ型SCD変異 (HbAS)とホモ型SCD変異 (HbSS)の双方について、ABE (Makassar ABE)によるMakassar変異への変換率 > 70%を実現した。ABEによる細胞損傷は見られなかった。
  • CD34陽性細胞がin vitroで赤血球へ分化する (in vitro erythroid differentiated: IVED)過程においてABE変換の結果は維持された。
  • HbSとHbG-Makassarを精密に識別する手法を開発し測定したところ、IVED培養バルクにおいて、トータルβグロビンの> 80%がHb G-Makassarであった。この結果は、HbSレベルが <20%まで低減したことと整合した。
  • クローンごとのアレル編集結果を分析したところ、両アレルMakassar変異を帯びた細胞の>70%からはHbSが完全に消え、単一アレルMakassar変異を帯びた細胞の場合はその~20%で塩基変換が実現していた。
  [Makassar変異誘導関連crisp_bio記事]
  • crisp_bio 2020-02-13  Liuグループ、グアニン (G)を含まない配列をPAMとするSpCas9変異体をファージによる指向性進化法で実現: "... 例えば、Gを含まないCACC PAMを認識するSpCas9新変異体を組み込んだABE (A:T-to-G:C)によって、これまで不可能であった鎌状赤血球症の病因変異を、病原性が無いとされている変異 'Makassar β-globin variant (HbG)'に変換することに成功した。"
 [CRISPRとshRNAによる療法関連crisp_bio記事]
  • crisp_bio 2020-12-06 CRISPR Therapuetics/Vertexの鎌形赤血球症とβ-サラセミアのCRISPR療法CTX001治験, 進捗
  • crisp_bio 2020-12-06 胎児型ヘモグロビン (HbF)発現誘導による鎌形赤血球症遺伝子治療 - shRNAによるBCL11A遺伝子ノックダウン
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