[注] CAST (CRISPR-associated transposase)
CRISPR/Casシステムは専ら、バクテリアとアーケアが、トランスポゾン、プラスミド、ファージ因子といった可動遺伝因子 (MGE) に対する獲得免疫機構として認識され、真核生物ゲノム編集への展開を経て2020年ノーベル化学賞 (crisp_bio 2020-10-07; crisp_bio 2020-10-08)に至ったが、一方で、CRISPR/Casのバリアントをコードするトランスポゾンの存在が明らかにされ、その分子機構の研究と応用が広がっている。
コーネル大学のJoseph E. PetersとNCBIのKira S. Makarova, Sergey Shmakov, およびEugene V. Kooninは、2017年にPNAS 誌にて[1]、続いて、2019年6月にNature Review Microbiology誌にて、CRISPR-Casシステムを取り込み自らの伝播に利用するトランスポゾンが存在するとした[2]。
2019年6月にはCRISPR/Casシステムをコードしたトランスポゾンを介したドナーDNAノックインの報告も続いた。
- コロンビア大学の研究チームによるVibrio cholera由来のTn7様トランスポゾン, "V. cholerae Tn6677トランスポゾン" (論文のFig. 1参照)を利用した成果 (Nature 誌オンライン [3])
- F. Zhang等にMakarovaとKooninが加わった研究グループによるScytonema hofmanni由来のTn7様トランスポゾンを利用した成果 (Sience 誌オンライン [4]); CAST (CRISPR-associated transposase) と命名 [論文のFig. 1参照]
2019年12月になってMakarovaとKooninが率いる国際共同研究グループがNature Review Microbiology 誌オンラインにて発表したCRISPR/Casの進化的分類体系のレビュー [6]では、2クラス- 6タイプ - 33サブタイプからなる体系を提案する中で、ヌクレアーゼ活性を担うcasタンパク質遺伝子を欠失している一連のCRISPR/Casバリアントが存在し、それらがRNAにガイドされるトランポジションに関与することが、注目点の一つとして取り上げられた。
[参考crisp_bio記事]
- crisp_bio 2017-08-18トランスポゾンはCRISPR-Casシステムを取り込み自らの伝播に利用する
- CRISPRメモ_2019/06/06 [第5項] CRISPR-Casの獲得免疫応答以外の機能と可動遺伝因子の貢献
- crisp_bio 2019-06-13 短縮型I-F CRISPR-Casを帯びたトランスポゾンにより、DSBを介さず大腸菌ゲノム標的サイトにDNAをノックイン
- crisp_bio [20200628更新] CAST: Cas12kとトランスポザーゼの協働によりドナーDNAを効率よくノックイン
- crisp_bio 2019-06-27 トランスポザーゼをdCas9-sgRNAで誘導し、4.5 kbを大腸菌lacZαにターゲッティング
- crisp_bio 2019-12-22 [レビュー] MakarovaとKooninら、CRISPR-Casシステムの分類体系を更新
- crisp_bio 2020-12-08 Tn7-CRISPR-Casトランスポゾンの転移は全てCRISPRアレイに由来するgRNAにガイドされる
コメント