[出典] "CiBER-seq dissects genetic networks by quantitative CRISPRi profiling of expression phenotypes" Muller R, Meacham ZA, Ferguson L, Ingolia NT. Science. 2020-12-11. https://doi.org/10.1126/science.abb9662 (bioRxiv. 2020-03-3 https://doi.org/10.1101/2020.03.29.015057)

 UC Berkeleyの研究グループは今回、環境からの信号と細胞内の状態の情報を統合して進行する細胞プロセスの分子基盤である遺伝子ネットワークを、CRISPRi [*]をベースとした遺伝子発現の定量的プロファイリングにより同定する手法 "CiBER-seq (CRISPRi with Barcided Expression Reporter-sequencing)"を開発し、出芽酵母において既知の遺伝子調節ネットワークを再発見するとともに、統合的ストレス応答 (ISR)に関与する新たな遺伝子調節ネットワークを発見し、CiBER-seqの妥当性と有用性を実証した。
[*] CRISPRiは、dCas9に転写抑制因子を融合し、gRNAを介して標的遺伝子の転写抑制を実現するシステム
  • 研究グループは、他の遺伝子群のノックダウンによる関心のある遺伝子の発現の変化を定量する汎用の手法開発を目指した。
  • CiBER-seqでは、アンヒドロテトラサイクリンで誘導可能なCRISPRiのgRNAカセットに、各gRNAに特異的なバーコードを付与したレポーター (Barcoded Exression Reporter: BER)を結合したプラスミドを細胞へ導入する。その上で、gRNAの発現誘導前と発現誘導後の細胞集団のディープシーケンシングにより、gRNA/遺伝子ごとにBER発現を定量し、RNA/DNA比を測る。2020-12-12 16.07.08
  •  [参考] bioRxiv投稿のFig. 1をCC-BY-4.0で引用し右図に挿入した; Science論文のアブストラクト内の図 およびFigure 1-a に相当
  • 出芽酵母において、4種類のプロモーター (PHO5, CWP1, MET6, ならびにHIS4)をクエリーとするCiBER-seqプロファイリングを行った。
  • 統合的ストレス応答 (ISR)の標的としてよく知られているHIS4 プロモーターをクエリーとするCiBER-seqプロファイリングから、uncharged tRNAの蓄積を誘導する遺伝子摂動がISRレポーターの転写を活性化することを確認した。加えて意外にも、tRNA生合成不全に伴うtRNA不足も、
    uncharged tRNAsを認識するGcn2キナーゼとは独立に、ISRレポーターの転写を活性化することを発見した。
  • さらに、2種類の遺伝子を同時標的するCiBER-seqの二重化と、翻訳調節と翻訳後調節を解析する間接的 (indirect)CiBER-seqも実現した。