[出典] "Dynamic 3D proteomes reveal protein functional alterations at high resolution in situ" Cappelletti V, Hauser T, Piazza I [..] Picotti P. Cell. 2020-12-23. https://doi.org/10.1016/j.cell.2020.12.021

 タンパク質は遺伝子から発現するが、タンパク質の発現レベルには影響しない分子間相互作用と化学修飾で制御される生体内で進行する生物学的プロセスを捉えることは、これまでのプロテオミクスでは困難であった。ETH Zurich, U Zurich, U Cologne, およびU Heidelbergの研究グループは今回、限定分解 (limited proteolysis)と質量分析を組み合わせた LiP-MS をベースとした手法を介して、そうした生物学的プロセスを、同時並行かつin situ で捉えることに成功した。例えば、バクテリアの栄養条件への適応のプロセスや酵母の急性ストレスへの応答のプロセスである。
  • LiP-MSでは、タンパク質のコンフォメーション変化をペプチドのパターンの変化 (構造バーコード)として読み出すことができる。これによって、酵素反応の変化、リン酸化、タンパク質凝集、および複合体形成といったプロセスを、プロセス内で制御される結合部位や活性部位といった機能部位の分解能で捉えることができる [論文グラフィカル・アブストラクト参照 https://marlin-prod.literatumonline.com/cms/attachment/d2f69a38-2fa8-492d-841c-ebe43087051a/fx1_lrg.jpg]
  • LiP-MSによって、これまでの手法で詳細が明らかにされてきた経路におけるタンパク質のコンフォメーション変化と機能変化を捉えることができた。
  • その上で、新たな代謝物とタンパク質の間の相互作用を発見し、大腸菌におけるフルクトース-1,6-ビスフォスフェートベースのグルコース取り込み制御プロセスの機構を発見した。
 LiP-MSは、細胞内外からの摂動に対する翻訳後修飾、アロステリック作用、触媒作用などからなる生物学的プロセスの総合的なモデルの構築を可能とするダイナミックな三次元プロテオミクスのツールであり、ひいては、in situ 構造システム生物学の道を拓くツールである。