2021-01-03 関連するScience誌掲載"展望"を以下に引用
[展望] COVID-19感染対策には, 診断, サーベイランス, スクリーニングそれぞれに適した検査法を選択すべき: "COVID-19 testing: One size does not fit all" Mina MJ, Andersen KG. Science 2020-12-21. https://doi.org/10.1126/science.abe9187
新型コロナウイルスの検査は主として高感度なPCRによって行われ一定の成果を上げてきたが、PCRは公衆衛生に向けた大規模検査への展開には向いていない。PCRを伝家の宝刀扱い(one-size-fits-allからの意訳)したことは、COVID-19感染拡大を抑止する公衆衛生施策に必要な検査方針の決定に混乱を招いた。
COVID-19/SARS-CoV-2の診断と、公衆衛生の観点からのスクリーニングとサーベイランスとは、その目的も戦略も異なっており、スクリーニングとサーベイランスには、簡便で低コストのツールが適している。スクリーニングとサーベイランスに最適なツールの発明、承認、生産および普及をサポートすることでこそ、COVID-19の拡大を効果的に抑制し、将来のパンデミックにも対応していくことが可能になる。[*PERSPECTIVE記事の挿入図参照]
個々人の感染診断に加えて公衆衛生の観点からのスクリーニングとサーベイランスにも利用可能なツールはすでに存在している: qPCRの他に, LAMP法, 抗原検査, 抗体検査, 抗原検査とLAMP法またはqPCRの組合せ。また、サーベイランスには、下水やスワブ表面を対象とする検査や、感染がそれほど広がっていない地域では、第一段階で検体をプールしての検査をするなどの工夫も有効なことが分かってきている。
しかし、症状が出ていない感染者を把握するスクリーニングが、ほとんどの国で欠けていた。それこそがCOVID-19パンデミックと戦うのに最も強力な武器であると認識し、最近FDAが緊急使用を承認した検査法 [*]やCRISPR技術をベースとした簡易迅速検査の普及を促進すべきである。[* crisp_bio 2020-12-19 新型コロナウイルス: FDA、家庭で利用可能な抗原検査キット2種類の緊急使用許可を承認 https://crisp-bio.blog.jp/archives/25073045.html]
例外的にスロバキアは、2週間のうちにパイロット試験を含めて3回、のべ5,276,832人 (スロバキア総人口の~80%)を抗原検査で迅速判定し、抗原陽性者50,466例を同定し、このサーベイランス結果をもとに対策を取り、2週間のうちに関連例を82%減じたと報告している [参考文献#12参照; https://bit.ly/36BkxV5]
新型コロナウイルスの検査は主として高感度なPCRによって行われ一定の成果を上げてきたが、PCRは公衆衛生に向けた大規模検査への展開には向いていない。PCRを伝家の宝刀扱い(one-size-fits-allからの意訳)したことは、COVID-19感染拡大を抑止する公衆衛生施策に必要な検査方針の決定に混乱を招いた。
COVID-19/SARS-CoV-2の診断と、公衆衛生の観点からのスクリーニングとサーベイランスとは、その目的も戦略も異なっており、スクリーニングとサーベイランスには、簡便で低コストのツールが適している。スクリーニングとサーベイランスに最適なツールの発明、承認、生産および普及をサポートすることでこそ、COVID-19の拡大を効果的に抑制し、将来のパンデミックにも対応していくことが可能になる。[*PERSPECTIVE記事の挿入図参照]
個々人の感染診断に加えて公衆衛生の観点からのスクリーニングとサーベイランスにも利用可能なツールはすでに存在している: qPCRの他に, LAMP法, 抗原検査, 抗体検査, 抗原検査とLAMP法またはqPCRの組合せ。また、サーベイランスには、下水やスワブ表面を対象とする検査や、感染がそれほど広がっていない地域では、第一段階で検体をプールしての検査をするなどの工夫も有効なことが分かってきている。
しかし、症状が出ていない感染者を把握するスクリーニングが、ほとんどの国で欠けていた。それこそがCOVID-19パンデミックと戦うのに最も強力な武器であると認識し、最近FDAが緊急使用を承認した検査法 [*]やCRISPR技術をベースとした簡易迅速検査の普及を促進すべきである。[* crisp_bio 2020-12-19 新型コロナウイルス: FDA、家庭で利用可能な抗原検査キット2種類の緊急使用許可を承認 https://crisp-bio.blog.jp/archives/25073045.html]
例外的にスロバキアは、2週間のうちにパイロット試験を含めて3回、のべ5,276,832人 (スロバキア総人口の~80%)を抗原検査で迅速判定し、抗原陽性者50,466例を同定し、このサーベイランス結果をもとに対策を取り、2週間のうちに関連例を82%減じたと報告している [参考文献#12参照; https://bit.ly/36BkxV5]
2021-01-02 初稿
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[出典] "Test sensitivity is secondary to frequency and turnaround time for COVID-19 screening" Larremore DB [..] Mina MJ, Parker R. (medRxiv 2020-09-08) Sci Adv. 2021-01-01. https://doi.org/10.1126/sciadv.abd5393
COVID-19パンデミックによって公衆衛生が危機に瀕している。COVID-19をもたらす新型コロナウイルスは、症状のある (symptomatic)感染者だけでなく, 発症前 (presymptomatic)や発症しないまま (asymptomatic)の感染者からも感染が広がることから、社会活動の再開とウイルスの蔓延の制御を実現するには、主としてウイルス検査をベースにした集団のスクリーニングを介して、サイレントリンクを潰すしかない
[注] 下線部は、国立感染症研究所の分子疫学調査報告にあった"3月から6月にかけて、特定の患者として顕在化せず保健所が探知しづらい対象 (軽症者もしくは無症状陽性者)が、感染リンクを静かにつないでいた (crisp_bio 2020-12-20参照)"という記述をベースに、原論文のテキストの一部をcrisp_bioが解釈した上での表現: ... means that diagnosis and isolation based on symptoms alone will be unable to prevent ongoing spread (4, 5). As a consequence, the use of population screening testing to identify infectious individuals presents one possible means to break enough transmission chains to suppress the ongoing pandemic and reopen societies, with or without a vaccine.
新型コロナウイルスに感染するとしばらくはウイルス濃度 [*1]が現行の検出法の検出限界以下の潜伏期間がしばらく続き、続いて、ウイルスが体内で指数関数的に極めて短期間で増殖し、やがて、ウイルス量と感染力がピークに達し、その後、ウイルス濃度が低下し始め、非検出に至る [*2] 。[*1 原論文ではvirus titerであり通常はウイルス力価と和訳される; *2 [20200914更新] 新型コロナウイルス感染症COVID-19の重症化への三段階 - 記事終盤の挿入図参照 https://crisp-bio.blog.jp/archives/23848465.html]
- 感染抑制効果の検査頻度への依存性についてFig. 1引用右図参照
- スピードが遅いほど [検査当日から判定が出るまでに要する日数がかかる (0日から2日後)ほど]、感染抑止効果が低下する結果について原論文Fig. 4参照]
- いずれの場合も、検査頻度に比べて、検査感度が与える影響はわずかである。
- 外部からの新型コロナウイルスが侵入する頻度, そしてまたは基本再生産数 (一人の感染者が感染させる人数)が高いほど、検査頻度を高める必要がある。
- 進行中のパンデミックも集団検査を繰り返すことで抑制可能である [Fig. 6参照引用右下図参照]
スクリーニングのための検査に求められる要件は、症状が疑われる場合の診断に求められる検査の要件とは異なる。後者には、高感度・高精度を求められ、また、高コストや判定に時間を要することも許容される。一方で、症状がない感染者のスクリーンには、高頻度に検査を繰り返す必要があり、また、判定に1日遅れが出るだけで感染リスクが高まることから、低コストで迅速な検査法が求められ、感度と精度より速度が重要である。FDAはそうした検査法、できれば自己診断可能な検査法をスクリーニング用として積極的に承認していくべきである。
[関連crisp_bio記事] crisp_bio 2020-12-19 新型コロナウイルス: FDA, 家庭で利用可能な抗原検査キット2種類の緊急使用許可を承認 https://crisp-bio.blog.jp/archives/25204523.html
今回の結果は、ウイルス量と感染力の相関などいくつかの前提条件に基づいて導かれており実地に展開するには、例えば、コミュ二ティーごとに特有な行動様式などを考慮した最適化が必要である。また、ウイルス量が急速に低下しつつあり、もはや感染力が無いと判定可能な回復期の感染者を識別し社会復帰させるために、24時間または48時間の間をおいて2回目の検査を行なって、早期復帰を認めるといった運用上の工夫も必要である。
[著者らがNEJMに先行投稿していたPerspective]
- "Rethinking Covid-19 Test Sensitivity — A Strategy for Containment" Mina MJ, Parker R, Larremore DB. NEJM. 2020-09-30. https://doi.org/10.1056/NEJMp2025631
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